• 一年中、旬の仕込みものを楽しんでいるという、薬膳・発酵料理家の山田奈美さん。1月から12月までその時々に楽しめる発酵食と保存食づくりをご紹介します。1月は「たくあん」と「きんかんの甘露煮」。きんかんは咳を止めて痰を切る作用があるほか、気のめぐりをよくして心を整えます。
    (『天然生活』2022年2月号掲載)

    旬に急かされながら、一年を通して仕込みものを楽しむ

    画像: 旬に急かされながら、一年を通して仕込みものを楽しむ

    神奈川県は三浦郡葉山町。海岸通りから山側に小道を入って、さらにまた一本。

    情緒あふれる小道沿いに山田奈美さんが暮らす自宅があります。

    築90年の古民家はうんと古いですが、すみずみまで掃除が行き届いていて、よく手をかけられていることがわかります。

    お話を伺いに行ったのは海風が少し冷たく感じられる11月の中旬。和室へと続く長い縁側に干し柿が並んでいました。

    「これはまだ少しですが、干し柿は毎年、100個は仕込んでいます。そのまま食べるほか料理やおやつづくりにも重宝するのであっという間になくなります」

    一年中、保存食や発酵食をつくっている山田さん。

    春には裏山で採れる山菜で保存食をつくり、夏は梅仕事や夏野菜を常備菜に、秋は柿やいもの干し仕事、冬はたくあんづくりや味噌仕込み……と“仕込みもの”は実にさまざま。

    昔ながらの道具と知恵を使い、その時々の旬を上手に保存しています。

    「一年中、休むことなく手を動かしていると、さぞ大変ではないかと思われるんですが、発酵食や保存食、調味料をつくることで季節の移ろいを感じられ、身体や生活のリズムも整っていくように思います。

    季節や食べものの旬は待ってくれませんからね。季節に急かされながら楽しんでやっています」

    1月に楽しむ、発酵食と保存食
    「たくあん」と「きんかんの甘露煮」

    画像: 1月に楽しむ、発酵食と保存食 「たくあん」と「きんかんの甘露煮」

    新年はじめの仕込み仕事は「たくあん」づくり。

    たくあん用の練馬大根を農家さんのところまで抜きに行き、軒先にずらりと干すところから始まります。

    2週間ほどして水分が抜けたらぬかに漬けてじっくり乳酸発酵させます。

    甘酸っぱくて食感のよいたくあんを食べると、それまでの苦労が報われるよう。

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    ▼たくあんのつくり方はこちら

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    また、庭にたくさんなるきんかんでつくる「甘露煮」もこの季節ならでは。

    そのまま食べるほか、お湯割り、焼き魚の付け合わせにも。

    薬膳的には咳を止めて痰を切る作用があります。

    気のめぐりがよくなるので、イライラや気持ちが沈みがちなときに食べるのもいいですね。

    「きんかんの甘露煮」のつくり方

    画像: 「きんかんの甘露煮」のつくり方

    ごくごく少量のしょうゆを加えるのがポイント。はちみつの量はお好みで増やしても。

    空気が乾燥するこの季節、お湯で割って飲むのはもちろん、のどが痛いときにうがいをすると効果が期待できます。

    材料(つくりやすい分量)

    ● きんかん100g
    ● はちみつ大さじ2~3(お好みの甘さで)
    ● しょうゆごく少々

    つくり方

     きんかんはよく洗い、竹串で穴を数カ所開ける。種を除く場合はへたがついていた部分を少し切って竹串などで取り出す。(種が気にならなければそのままでよい)

     土鍋(またはホウロウ鍋)にきんかんとひたひたの水を入れ、弱火で煮る。煮汁からきんかんが顔を出してしまうとシワが寄るので、適宜、水を足しながら煮る。

     きんかんが透き通ってきたら(ここで一度かじってみて、皮が苦いようなら水を替える)はちみつを加え、とろみが出るまで煮詰める。最後にしょうゆを加える。


    〈監修/山田奈美 イラスト/しらいしののこ 取材・文/結城歩〉

    山田奈美(やまだ・なみ)
    薬膳・発酵料理家。食養研究家。発酵食や薬膳に造詣が深く、神奈川県葉山町で発酵や薬膳の料理教室を開催している。季節の発酵食と保存食づくりについて詳しく紹介している『昔ながらの知恵で暮らしを楽しむ家しごと』(エクスナレッジ)ほか著書多数。夫と小学生の息子の3人暮らし。
    http://tabegoto.com/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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