• 土地に伝わる郷土食には、素朴で特別なおいしさがつまっています。昔ながらの味を求めて、料理家の飯島奈美さんと群馬県の高山村をめぐりました。今回は、高山村の郷土食「生こんにゃく」のつくり方を、こんにゃく農家で料理上手と評判の、松井ゆき子さんに習いに行きました。
    (『天然生活』2020年1月号掲載)

    自分で工夫してつくるから、おいしいし、楽しい

    四方を山に囲まれた群馬県・高山村。

    伝統野菜の高山きゅうりやお米が特産品として知られ、こんにゃく芋の栽培も昔から盛んです。

    市販のこんにゃくは芋の粉を加工したものがほとんどですが、高山村では生芋からこんにゃくをつくる家庭がいまでも多いそう。

    仕事柄、郷土食をさまざま食してきた飯島奈美さんも、「生こんにゃく」は未体験。

    こんにゃく農家で料理上手と評判の、松井ゆき子さんに習いに行きました。

    画像: 軽快にこんにゃく芋を練る飯島さん。「炭酸ソーダを入れたあと、芋が『きょろきょろ』する感触が独特です。練るほどおいしくなると聞いたら、ますます力が入りますね」

    軽快にこんにゃく芋を練る飯島さん。「炭酸ソーダを入れたあと、芋が『きょろきょろ』する感触が独特です。練るほどおいしくなると聞いたら、ますます力が入りますね」

    「生芋のこんにゃくを食べたら、もうほかのこんにゃくは食べられなくなるはず」

    迎えてくれた松井さんの言葉に期待が高まります。畑で収穫したばかりの大きなこんにゃく芋をミキサーで液状にして鍋で火を入れながら練っていくと、だんだん薄桃色に。

    「きれいな色ですね。フルーツみたいに香りもいい」と驚く飯島さんに「これが本来のこんにゃくの色。桃のような香りも生芋ならではです」と、松井さん。

    初心者はこの「練り」に苦戦するそうですが、飯島さんはすぐにコツをつかみ、松井さんも太鼓判。

    「練れば練るほどなめらかな食感のこんにゃくになるから、きっとおいしいのができますよ」

    画像: 飯島さんに教える松井さん。芋の品種や土壌によって、生こんにゃくでもグレーっぽい色になることもあるそう

    飯島さんに教える松井さん。芋の品種や土壌によって、生こんにゃくでもグレーっぽい色になることもあるそう

    刺し身、味噌田楽、佃煮。でき上がったこんにゃくを使った料理がテーブルに並びました。

    生こんにゃくを初めて味わった飯島さん、ぷるぷるのみずみずしい味わいに、「想像以上においしい!」と箸が止まりません。

    「こんにゃくも梅干しも祖母や母に教わってつくり始めて、自分なりに変えながら何十年もやってきたから、ちゃんとしたレシピはないんです。でき上がりを想像しながら味や分量を加減してつくる過程が、とても楽しくて。自分でおいしいものがつくれるのは幸せなことだと、いつも思います」



    <撮影/有賀 傑 取材・文/熊坂麻美>

    飯島奈美(いいじま・なみ)
    東京都八王子生まれ。フードスタイリストとして数々のテレビCM、映画、テレビドラマに関わり、記憶に残る「食」を表現。オリジナルレシピ付きのエッセイ集『ご飯の島の美味しい話』(幻冬舎)など著書多数。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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