誰でもいつかは介護される人に
後期高齢者になると、介護する人の技術も大事だけれど、それ以上に介護される人の態度が介護の要になる、と思うようになりました。
そのきっかけになったのが、一般の方の介護体験記を1冊の本にまとめた時のこと。
数ある体験記のなかで、最も印象に残ったのは、「長女の家に引き取られて介護を受け、102歳で亡くなった女性の話」で、長女の方が書かれたものでした。
その高齢女性は、介護される者の心得ともいうべき信条を実践し、家族と介護スタッフに感謝し、機嫌よく過ごされたといいます。
その心得とは、①命令しない、②反対しない、③不足をいわない、④小言をいわない、⑤怒らない、の5つ。これなら介護する人も楽です。
これを機に私は、「ケアされ上手」という言葉を使い始めました。
年老いて自分を律するのは難しいことですが、はやいうちから、「いずれは自分が介護を受ける側になる」という心づもりだけはしておいたほうがよさそうです。
人はいずれ、誰かの世話にならないと生きていけないのですから。
※ 本記事は『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』(清流出版)からの抜粋です。
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経験、実感、調査データからひも解く、ヨタヘロ期のココロエ。
わたくし92歳。ムリせず、楽しく、少しがんばって、暮らしています。
【目次】
はじめに 幸せな「老い」を生ききるために
第1章 人生一〇〇年時代の「老い」とは
第2章 老いに必要な、ライフスタイルを身につける
第3章 健康管理・危機管理は人の手も借りて万全に
第4章 自分の気持ちを大切にする人生の終い方
第5章 この先も人生の主人公。前向きに生きるには
おわりにかえて 私のターニングポイントと、力を注いできたこと
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樋口恵子(ひぐち・けいこ)
1932年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。時事通信社、学習研究社、キヤノン株式会社を経て、評論活動に入る。政府の男女共同参画会議の委員などを歴任。介護保険制度創設に尽力するなど、女性や介護、高齢者問題に深くかかわり、執筆や講演などに力を注ぐ。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」前理事長(現在は名誉理事長)。著書に『老いの福袋 あっぱれ!ころばぬ先の知恵88』『老いの上機嫌 90代!笑う門には福来る』(ともに中央公論新社)など多数。