(『天然生活』2021年4月号掲載)
「今日はどうだった?」母娘の会話が広がるお弁当
娘さんが2歳のときからずっとお弁当をつくりつづけている飛田和緒さん。
おかずに関しては以前より自由度が広がったと続けます。
「子どものうちはお弁当箱をぶんぶん振り回すでしょう。おかずが寄ったり汁けが漏れたりということがよくありましたね。いまは気にせず詰められるようになりました。お弁当に汁は大敵とされているけれど、汁けがあるからこそのおかずもありますよね。
たとえば高野豆腐の炊き合わせは、だしがたっぷりしみた味がおいしさだから、それを知ってほしいと思っています。お弁当だからあれはダメ、これはダメと思わず、いろいろ試してみたらいいと思いますよ」
小さいころから食べることが大好きだという高校生の娘さんは、お弁当の時間をとても楽しみにしているそう。お弁当を通じて母娘の会話もあるそうで……。
「学校のことなどはなんでも話してくれるほうですが、年頃ゆえ、ちょっと元気がないかな、試験前でピリピリしているかな、というときもありますね。そんなときは、“今日のお弁当どうだった?”“明日のおかずは何がいい?”とお弁当のことを話題にすることがあります。すると、心がふわりと軽くなるのか不思議とおしゃべりもなめらかになるんですよね」
母や祖母が料理する姿を見ながら自分が学んだことを娘にも知ってもらえたら、と飛田さんは話します。娘を思う母の思いは、お弁当にたっぷり詰まっています。

まずは炊きたてのごはんをお弁当箱に詰めて。「ごはんもおかずも、しっかり冷ましてからふたをすることは気をつけています」

長年使っている曲げわっぱのお弁当箱。アルマイトのお弁当箱は飛田さんが子どものころに使っていたものだそう

「たけのこごはん弁当」のつくり方
飛田さんからのメッセージ
娘へ。たけのこの季節になったね。たっぷり詰めてみたよ。

春の時季ならではのお楽しみ。たけのこごはんは娘の好物。野菜や高野豆腐、玉子などを詰めてバランスよく仕上げて。
たけのこごはん

細かくきざんだ油揚げがアクセントに。木の芽を添えると、一気に春らしくなる。
材料(2合分)
● ゆでたけのこ | 150g |
● 油揚げ | 1枚 |
● 米 | 2合 |
● だし | 適量 |
● 塩 | 小さじ1 |
● 薄口しょうゆ | 大さじ1 |
つくり方
1 米はふだん通りにとぎ、だしをふだん通りの水加減で加えて浸水させておく。
2 たけのこは小さめの薄切りにする。油揚げは油抜きせず、1枚に開いて粗みじん切りにする。
3 1に塩、薄口しょうゆを加えてひと混ぜし、2をのせて炊く。十分蒸らしたら軽く混ぜ、お弁当箱に詰める。あれば木の芽を添える。
〈撮影/川村 隆 取材・文/結城 歩〉
飛田和緒(ひだ・かずを)
料理家。身近にある四季折々の食材を使った家庭料理を提案する。お弁当にも大活躍の常備菜のレシピを集めた著書『常備菜』(主婦と生活社)は料理レシピ本大賞を受賞。著書に『くりかえし料理』(扶桑社)などがある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです