(『天然生活』2024年5月号掲載)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
胸を張って「80になりました」といいたい
「いま78歳で、もうすぐ79歳。80歳になるのが楽しみなんです。胸を張って『80になりました』といいたいですね」
コペンハーゲンに滞在中のユキ・パリスさんに取材をして、第一声として聞いたのがこの言葉。

ユキさんのいつものお茶の風景。テーブルには暮らすなかで、少しずつ買い集めた食器が並ぶ。時間の積み重ねが、午後のひと時をいっそう豊かにしてくれる
京都に生まれ、結婚を機にデンマークへ居を移し、キュレーター、コーディネーターとして数々の展覧会を手掛けてきたユキさん。
ご実家を改装し、長年ヨーロッパ各地で集めてきた手仕事を紹介するミュージアムと、古今東西の優れた美術、工芸などを扱うアンティークショップ「ユキ・パリス コレクション」をオープンさせたのは、50代半ばを過ぎてから。
そこから20年以上の月日が流れました。
コロナ禍では一時帰国を中断されたものの、いまでも二拠点を往復する暮らしを続けています。
「戦後生まれといいつつも、私と同世代の日本女性はまだ、だれかと結婚し妻や母として生きることが普通でした。ところが北欧では、バイキングの時代から女性も社会で働くのは当たり前。『専業主婦』という地位は存在しません。長年フリーランスでさまざまな企業とも仕事を続けてきましたが、自分も年齢とともにより成熟していける仕事をしたいと考えるようになったことが、ミュージアムを開いた理由のひとつでもありました」

おもてなしのテーブルは白とブルーを基調に、ユキさんのテーマカラーの黄色をアクセントに

ラズベリーの発酵サイダーやクコ茶など、お茶の時間にはいろんな飲みものを用意。「これは何?」と、お客さまとの会話も弾む
〈撮影/Anders Bøggild 取材・文/田中のり子〉
ユキ・パリス
1945年京都生まれ。70年の大阪万博勤務後、結婚を機に渡欧。北欧を中心にさまざまな展覧会の企画、監修を手掛ける。2002年京都にミュージアムショップ「ユキ・パリス コレクション」をオープン。