(『別冊天然生活 薬膳でめぐりのよい健やかな暮らし』より)
風通しのいい整った空間は、心と体を健やかにしてくれる
料理家のコウ静子さんが暮らすのは、見晴らしがよく、大きな窓から青々とした木々が望める部屋。
窓を開け、さらに奥の部屋の窓を開けると、風が 部屋中を一直線に通り抜けます。
「何より心地いいのは朝。まず両側の窓を開け、空気をすべて入れ換えます。そして深呼吸をして、夜のあいだに体にたまった“濁気(だくき)”を外に出し、新しい空気を体にも取り込むことから、1日が始まるのです」
濁気とは、体にたまった不要なもの。抜けていく風は、前夜から停滞した空気とともに、それらを一気に取り去ります。空気によどみがなくなれば、心も体もおのずと穏やかに整います。

料理の創作に没頭するためにも部屋を整え、インテリアの色味を抑えている。「書物からレシピのヒントを得ることも」
「わが家の収納は、基本的に扉の付いた棚にしまう形をとっています。ものがたくさんあると、風が気持ちよく抜けませんから」
“ものは出さずに整える”を徹底するコウさんの家で、出したまま置かれているのが、果実酒と果実茶。薬食同源に則った東洋医学のひとつで、韓国独自に発展した韓方による製法です。
「私たちにとって、これらはお薬箱のような存在。体をめぐりよく、健やかに保つためには日々欠かせません。果実や薬草の形、色合い、少しずつ濃くなっていくお茶やお酒の様子を眺めるのも、心安らぐひとときです」
韓方(はんばん)とは
中医学をベースに、韓国の自然や風土、人々の暮らしや体質に合わせて発展した韓国の伝統医学
コウ静子さんの薬膳生活
晴れやかな1日は、朝食から
「体を構成する気・血・水は、朝食をとることにより、脾(胃)でつくり出され、全身へとめぐります。脾が弱ると気持ちが曇りがちに」
だからこそ、朝食は手軽でありながら、バランスのとれたものが必要とコウさんは考えます。
「前向きになれる食材を意識してとるといいですね。気を補う食材、そら豆を炊き込みごはんにしてみました」

気を補うそら豆とデトックス作用のある高麗アザミのごはん。醬(ひしお)や味噌とキャベツで包んで
暮らしをめぐらせるプチアイデア
ベランダにはグリーンを

窓の外に広がるたくさんの木々。加えて身近な場所にも植物を。「レモングラスや山椒、ローズマリーなど、すべて料理に使えるもの、そして香りのいいものばかりを育てています」
ホワイトセージを焚いて

古くから、けがれを祓う効果が高いとされるホワイトセージ。気分を一新したいときは、部屋の中央で燻します。
「漂う香りに気持ちが落ち着き、空気が浄化されていく実感があります」
〈撮影/公文美和 取材・文/福山雅美〉
本記事は『別冊天然生活 薬膳でめぐりのよい健やかな暮らし』(扶桑社)からの抜粋です
日々の食から健康になる「薬膳」のある暮らしと、シンプルレシピ集
「薬膳」「漢方」を健康のために積極的に取り入れる人が増えています。薬膳は、季節や体調に合わせて食材を選び、バランスの取れた食生活によって健康を保つ知恵です。旬の野菜は無理なく取れて値段もお値ごろ、そしてその季節に多い不調を改善する力があります。ぜひ日々の食生活や生活習慣に「薬膳」を取り入れて、健やかな体づくりを。ウー・ウェンさん、コウ静子さん、小鮒ちふみさんの薬膳料理のシンプルレシピも収録しています。
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コウ静子(こう・しずこ)
料理家、国際中医薬膳師、茶人。薬膳や韓医学を取り入れ、体を穏やかに整えるレシピを多数発表している。著書に『季節に寄り添う韓国茶』(グラフィック社)、『症状別 不調のときに食べたいごはん』(家の光協会)など。
インスタグラム:@kohshizuko