(『天然生活』2022年10月号掲載)
見せる・しまうを心地よくする台所づくり
自分自身の「心地いい」に耳を澄ませ、正直に、楽しく、一つひとつのものと向き合っている鄭さん。
台所全体についても「使いやすさ」を吟味して、自分らしい配置や収納を取り入れています。
自然素材のかごやざる、銅の調理道具ややかんなど、「好きな道具はいつも目に触れていたいから」なるべく見える場所に。逆に見たくないものや見せたくないものは、徹底的にパントリーや棚の中へしまっています。

「もう少し暮らしが落ち着いてきたら、このやかんでお茶を淹れて、ゆっくりとした時間を過ごすのが、いまの楽しみ」と、憧れの暮らしを思い描きながら、出番を待つ好きな道具を飾り、眺めて楽しむ。右はお重、中央はグラタン皿
そして、日常的によく使うものについては、たとえば、フライパンはレンジフードのフックに掛けて、家族も出し入れするカトラリーはリビング側のチェストに、というように、「ストレスなく、さっと手に取れる」場所が、おのずと指定席に。
「定位置をおろそかにするから煩雑になってしまうのだと思います。ここで使うものは、ここに。ものの場所はあちこち変えません」
出番の多い調味料はコンロ横に置くだけでなく、風情ある壺に入れて。作業テーブルの下のごみ入れには、素朴な竹かごを用いて。
美しい道具を慈しむまなざしと、暮らしを紡ぐ生活者としての視点、鄭さんが案内してくれたのは、その両方を兼ね備えた台所です。
「ここで生み出すものが、活動の原動力になりますからね。台所って、やっぱり大事な場所ですよね」
<撮影/伊藤 信 取材・文/山形恭子>
鄭玲姫(チョン・ヨンヒ)
1998年に、京都市上京区にて李朝家具や陶磁器を設えたカフェ「李青」を開く。伝統茶など韓国の食文化を伝えるとともに、店内の一画で骨董や手仕事の日用品なども販売。京都市内の岡崎公園で毎月開催される「平安蚤の市」に出店することも。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです