職人の手仕事、日本ならではの素材。長年料理の仕事を続け、現在はテディベア製作人の宮本しばにさんに、使うほどに魅力が増す、日本でつくられた自慢の愛用道具を、使い方とともにご紹介いただきます。
(『天然生活』2024年9月号掲載)
(『天然生活』2024年9月号掲載)
素材をおいしくしてくれる自然素材の道具は、仲間のような存在
土瓶で湯を沸かすと味がまろやかになったり、素朴な野菜が鉄のフライパンで焼くだけでとびきりおいしくなったり。土や鉄、竹など、自然素材でつくられた日本の台所道具には、素材をおいしくする不思議な力が備わっています。
「台所って、家の中で一番自然が集まる場所だと思うんです。水も食材も火も自然のもの。それをおいしくしてくれるのは、やっぱり自然素材の道具なのだと思います」
日々、「こんなおいしさもあるんだ」と道具に教えられているという宮本さん。働き者の相棒たちとつきあううえで大切にしているのは「敬意を払う」ことです。
「上から目線で道具を見たら、乱暴に扱ってしまうだろうし、それだとおいしいものはつくれません。一緒に働く仲間、もしくはちょっと先輩ぐらいだと思って『今日もよろしくお願いします』という気持ちで接しています」

30年以上前から、静寂と自然に囲まれた長野県の山奥で夫と暮らす宮本さん。現在はテディベアの制作を行い、講師も務める
〈撮影/柳原久子 取材・文/嶌 陽子〉
宮本しばに(みやもと・しばに)
長野県在住。長年、日本の台所道具と料理をテーマに「素描料理」という独自の料理法を追求する。現在は料理の仕事から離れ、テディベア制作のワークショップなど、手仕事の活動にいそしむ。著書に『台所にこの道具』『野菜たっぷり すり鉢料理』(ともにアノニマ・スタジオ)など多数。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです