更年期のハーブ療法における、現実と研究結果のギャップ
また、メリンダは大学院で「更年期障害に対するハーブ療法の評価に適した研究デザインを見極める」というテーマに取り組んでいました。
ハーバリストとして効果を実感しているハーブが、研究論文では否定的な結果になることが多いのはなぜだろうという疑問をもっていました。
何百もの研究論文を調べたところ、ハーブの効果を否定する結果が多い理由として、ハーバリストによるハーブ療法とは異なり、ハーブではなくハーブの抽出物(サプリメント)が使われていること、また、評価の方法が被験者の主観的な判断によるものなど、さまざまな要因が考えられたそうです。
しかし、その中でメリンダが印象に残っている研究がひとつありました。
それは、特定のハーブが更年期障害に効果があることを調べるものではなく、何もしないグループと、一人ひとりの症状に合わせてハーブ療法を行ったグループを比較して、どのような違いがあるかを見たものです。
その結果、ハーブ療法を行ったグループには明らかな改善が見られました。これは、誰にでも同じ方法ではなく、一人ひとりに合わせたアプローチが大切だということを示しています。

ホーソンのチンキ
ひとりひとりに必要なアプローチ
その中で、メリンダは同じく更年期の不調を訴える女性たちのケアに取り組んでいるハーバリスト・アニータと共に講演しました。質疑応答では、会場からさまざまな質問が活発に上がりました。

ハーブフェスティバルでの講演会
ホルモン補充療法(HRT)の安全性や更年期に起きている体の変化、社会における更年期の捉えられ方、まことしやかに語られる更年期障害の真偽、フィトエストロゲン(植物性エストロゲン)を巡る疑惑などです。
大切なことは、そもそも「答えはひとつではない」ということ。更年期の経験も、もともとの体質や体調も一人ひとり違います。たったひとつの正しい答えによって、すべての人が癒されると考えることはできません。
ハーブ療法のアプローチはハーブの選び方、摂取頻度や用量、摂取期間などどれをとってもケースバイケースだということを強く伝えていました。
また、信頼できる情報を提供し、治療の選択肢を示すことができる医療従事者や治療家がもっと求められていることも浮き彫りにされました。
ハーバリストが提案するハーブ療法は、ホルモンバランスだけに注目して、更年期の不調を改善しようとするものではありません。その人の体質や生活全体を見て、一人ひとりに合わせたハーブの選択や、ライフスタイルの改善を提案するものだと強調していました。

フェスティバルの様子
更年期をどう過ごすか

2024年、英国更年期学会での講演にて
英国では、女性が歳を重ねて更年期を迎えたとき、不快な症状を経験し始めると勧められるがままにホルモン補充療法を受けるというケースがまだまだ見られるそうです。
30代、40代は仕事や育児に明け暮れ、自分自身のケアに目を向けることがないまま過ごしています。そのストレスや、場合によっては離婚などを経験し、メンタル面でのサポートを必要としながらも、気がついたらある日突然、更年期障害に悩まされる。そんな経験をしている女性は少なくありません。
メリンダは、少しでも早い段階から体調を整えて、ライフステージの変化への心構えをして欲しいと考え、これから40代を迎える女性たちもターゲットにしています。
メリンダは、必ずしもすべての人にハーブ療法を選択してほしいと思っているわけではありません。一人ひとりがさまざまな情報に触れて、自分の望むケアを始めて欲しいと願っています。
それと同時に、人々が植物による癒しを求めていることを疑っていないそうです。私たちが医薬品や現代医療で施される治療に出会ったのは、長い人類の歴史の中でいえば、つい最近のほんの短い期間です。
それまでの間、世界各地でその土地に根付いた植物によって癒されてきました。私たちの体はどこかでそれを記憶しているのではないかと考えています。

国会議事堂前にて。更年期における自然療法の役割について公聴会に招集された
ハーブ療法は新しいものではなく、古くから培われてきたもので、私たちはいまそれを再び受け入れようとしているだけ、というのがメリンダの考えです。
私たちはすでに植物との深いつながりをもっています。これからも、受け身ではない「女性と更年期との在り方」をサポートし、より多くのクライアントに関わっていきたいそうです。
メリンダから学んだのは、「伝える」ことの大切さです。ハーブの情報が溢れるいま、誰にどう届けるかは工夫が必要です。
科学的なエビデンスが響く人もいれば、別の言葉が必要な人もいる。でも、どんな伝え方をするにしても、ハーブ療法の本質であるホリスティックなアプローチだけは、ぶれずに伝え続けることが要となるようです。

女性の健康に欠かせないハーブ「ヤロウ」を持ったメリンダ
Melinda McDougal(メリンダ・マックドゥガル)
メディカルハーバリスト、英国メディカルハーバリスト協会元理事、元Aeon Books出版企画編集者、英国ミドルセックス大学ハーブ医学修士。ジャーナリストとドキュメンタリー映画のディレクターとしてキャリアを積んだ後、ハーバリストとなる。ウィメンズヘルス、とくに更年期を専門とし、啓発活動にも取り組む。
https://www.melindamcdougall.com
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▼石丸沙織さん「英国のハーバリスト」そのほかのお話はこちら
〈撮影・文/石丸沙織 写真提供/メリンダ・マックドゥガル〉
石丸沙織(いしまる・さおり)
英国メディカルハーバリスト、アロマセラピスト。イギリスでハーブ医学を学んだのち、東京、香港を経て、2011年より鹿児島県奄美大島在住。地域に根差したハーバリストとして、身近なハーブを暮らしに取り入れたケアを広めている。菓子研究家・長田佳子さんとの共著に『ハーブレッスンブック』(アノニマ・スタジオ)、訳書に『フィンランド発 ヘンリエッタの実践ハーブ療法』(フレグランスジャーナル社)がある。
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メディカルハーバリストの石丸沙織さんと菓子研究家・長田佳子さんは2018年より「herb lesson」を開催してきました。ハーブのテイスティングとそのシェアリングに時間をかけ、教科書的なハーブの知識だけではなく、それらが使う人の心身にどのように響くかを大切にしています。
ハーブティー、ブレンドの考え方、ハーブバス、チンキなどのレメディ、ハーブの風味を味わうお菓子を暮らしに取り入れてみましょう。自分の感覚を大事にする、こころとからだを癒すセルフケアの方法やアイデアをご紹介します。
ハーブとの出逢いを通して、新しい自分に出逢える一冊です。







