畑の草花を仲間とハーブティに。おばあちゃんになっても続けたい

熊本県阿蘇の産山(うぶやま)村に夫婦で移住して10年。若いころには思いもよらない場所で、予想もしていなかった農業者となりました。
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右も左もわからずに始めた畑の作物は少しずつ増え、いまは野菜やそば、スペルト小麦、ワイン用のぶどうなど、農薬や化学肥料を使わずに育てています。
育てるうちに、自分たちがつくる野菜やハーブを商品化できないかと思い、あるとき、村が開催した「起業・ものづくり塾」に参加しました。ふるさと納税の返礼品などに、商品開発を無料でサポートする伴走型支援です。
野菜の加工品など、アイデアはたくさん出てくるのですが、何かをつくるときは加工所が必要。主軸のなりわいにしたいわけではなかったので、大きな投資は厳しい。ただ、「乾燥させて売る商品なら大規模な加工所じゃなくても可能」とも知りました。
ものづくり塾への参加者は女性が多く、私と同じように主軸ではないが何かできないものか、という人が目立ちました。そのなかで、同年代の、エディブルフラワー生産者の女性、クラフトジンや天然香水をつくってみたいと思っていた女性と「ドライ」をキーワードに意気投合。商品化を一緒に考えることになりました。
野菜をドライにするのは水分や糖分も多く大変だから、使うなら野草や花がいいね、それならハーブティーはどうか、これならおいしい、あれも飲めるんだ、と試行錯誤していくうち、ハーブティーにどんどん興味をもつように。
そうして、「ハーブティーを好きじゃない人もおいしいと思うものをつくりたい」と私のものづくりの方向性が決まっていきました。
いまではチーム「+ボタニカル ウブ」として少量ながら業務用を受注生産しています。お小遣い程度ではありますが、月に一回集まっておしゃべりしながら制作するのが楽しい。「おばあちゃんになっても続けたいね」と話しています。
産山村はハーブティーの素材の宝庫

ハーブティーに使える野草やハーブは、レンゲやよもぎのほか、すぎな、カキドオシ、ハルジオン、ハハコグサ、カレンデュラ、矢車草、アニスヒソップ、レッドクローバー、エキナセア、桑の葉、いちじく、ダリア、ミント、オレガノ、かぼすなどなど。季節ごとに変わります。
とくに春がやってくると毎年そわそわ。最高気温でもマイナスの産山村の冬を越えた大地から、次々に芽吹くあの草も、この葉っぱも、あっちの花もこっちの新芽も、大事なハーブティーの材料だからです。

「あぁ咲ききる前にぶどう畑のレンゲを摘んで乾燥させなければ!」「あー草刈りが始まる前に、あの畑のよもぎを収穫するぞー」「おっと足元にはたんぽぽ」などと、脳内でひとり言が止まりません。
レンゲは花粉が多く甘味が出ますし、春のよもぎは、さすが和ハーブの女王と呼ばれるだけある香り。生でかじるとほろ苦いたんぽぽも、乾燥させてお茶にすると飲みやすく、やさしいおいしさに。
毎日、業務用の乾燥機に入る分だけ、収穫します。季節ごとの野草を相手に、秋の終わりまで続いていく作業です。雨予報でも重なるとさぁ大変。おいしくて心ときめく、愛らしいハーブティーをつくろうと思うと、葉や花が美しい姿のうちに、なにがなんでも採集しなければとあせります。
つくるときも、飲むときも、ときめきたい

乾燥を終えたら、組み合わせるハーブを決めます。私の場合、まずは目の前の野草やハーブ、お花が咲いている様子を想像してみます。さらに、その姿に合う別の植物を組み合わせて想像してみます。
色み、陽の光や風を受けた姿、花粉をつけた様子、頭のなかに素敵な景色が広がります。その空想風景を元に、乾燥した植物をブレンドしてみます。

ガラスポットに入れてお湯を注ぎ、ゆらゆら揺れる葉や花を眺めながら数分。ゆっくりカップに注いで、飲んでみます。
私はぬるめのお湯で長めに時間をかけて抽出するのが好き。やさしい甘味や香りが際立つように感じます。自分の好きな味であれば、あとは特徴を精査して完成です。

最後にブレンドに名前をつけるのも楽しい作業。「たいようのかけら」「春陰」「utatane」「冬の朝」など、名前をつけた瞬間に、ここにある、ここだけの、私のオリジナルのハーブティーができ上がります。
手に取ってくださる人にとって、里山に暮らす私たちからの手紙のようにときめいてもらえたら。そんなふうに願いながらつくることも、日々の喜びになっています。

折居多恵(おりい・たえ)
雑貨クリエーター。大手オモチャメーカーのデザイナーを経て、東京・代官山にて週末だけ開くセレクトショップ開業。夫(フレンチシェフ)のレストラン起業を機に熊本市へ移住し、2016年秋に熊本県産山村の限界集落へ移り住み、農業と週末レストラン「asoうぶやまキュッフェ」を営んでいる。
https://www.ubuyamakuche.com/
インスタグラム@kuche_ubu





