(『天然生活』2010年10月号掲載)
家仕事のひと工夫
揚げものをするときは、消火用の葉野菜とざぶとんを用意
タミさんは、揚げものをするとき、常に小松菜などの葉野菜とざぶとんを、手元に用意しておくそうです。
これは、火事への対策。油が高温になって炎が立つようなことが起きたら、まず、燃えている炎に向かって、葉野菜をかぶせるように入れます。そうすると火の勢いが弱まるので、すかさずざぶとんで覆えば、消火できるのだそうです。
小松菜などの青菜類だけでなく、キャベツの外葉も同じように使えるといいます。
火を扱う台所は、火事などが起こる危険が高い場所。だからこそ、手近にあるものを使って、常に危険に備えるのです。
お皿の汚れをふき取り、ため水洗いをする
「戦前、井戸水をつるべを使ってくんでいたころを覚えていますから、水の大切さは身にしみています」というタミさん。汚れた食器はため水を使って洗います。
まず、洗い桶はふたつ用意します。汚れた食器はチラシなどで油や汚れをしっかりふき、水をためた桶で洗います。このときの水は、野菜などをゆでるのに使った残り湯があれば、それを使います。
その後、お湯を張った桶に食器類を移してすすぎ洗いをし、ふきんでふき、さらに二度ぶきして、きれいに仕上げます。
そしてそのお湯も捨てずにお掃除などに使うのです。
「水は生き物の生命線です。ふだんから水を大切に使うクセをつけましょう」
昆布は長くねかせて
タミさんは、昆布を買ってきたらすぐ袋から出して、干しておくのだそう。そしてそのままねかせておきます。
「ねかせておくと、おだしの味がよくなるから、3年以上おいておくといい」
昆布が白い粉を吹きますが、これはうま味。洗い流さず、使う前に軽くふくだけでいいそうです。そうやって干した昆布は、10×10cmほどの大きさに切って、容器に入れて保存します。
これは、日々の食事の味のベースとなる水だしに使います。水だしは、800mLほどの水に昆布1枚といりこ(15〜20g)を入れてひと晩置いたもの。夜寝る前につくって翌日に使います。
銅製品は、梅干しのしそで磨くとピカピカに
タミさんは銅鍋をよく使います。銅鍋は熱伝導がよく、火のあたりがやわらかく、均一に火がとおります。つまり、「おしいものがつくれる」のです。
お手入れが難しい、という印象をもつ人もいるかもしれませんが、コツさえつかめばそれほど難しくはないそう。
洗ったあと、軽く温めて(決してから焚きはしないこと)水分を飛ばしておけば、緑青が出ることもありません。年を経るごとに鍋の表面がくすんで変色してきますが、梅干しのしそで表面を磨くといいそうです。
梅干しのしそに含まれるクエン酸の効果で、まるで新品のようにピカピカになります。
動画:桧山タミさん95歳。いま、伝えたい想い
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<撮影/繁延あづさ 取材・文/土屋 敦>
桧山タミ(ひやま・たみ)
1926年、福岡県生まれ。17歳から料理研究家・江上トミ氏に師事。30代半ばで独立。52歳のとき、現在の地に「桧山タミ料理塾」を移し、40年になる。著書に、愛情と自然の恵みを大切にする家庭料理のありようと、生き方の哲学を余すところなく記した『いのち愛しむ、人生キッチン』、小学校で行った授業をもとに幸せな未来のための話を集めた『みらいおにぎり』(ともに文藝春秋)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです