(『天然生活』2013年10月号掲載)
トマト仕事 | 8月~
ヘタのみずみずしいトマトで作り置き 松田美智子
「山盛りに売られている真っ赤なトマトを見ると、うれしくなって、つい買ってしまうんです」という松田美智子さん。いまや、トマトは年間を通して人気の野菜です。
けれど、真夏の太陽をいっぱいに浴びたトマトのおいしさは、特別。青くさい野性的な香りが強くなり、甘味も酸味も格段に深くなります。
出盛りの安い時期にたくさん買って、ソースにしておいしさを閉じ込めれば、いつでも、夏の日のトマトの味がよみがえります。
「生で食べておいしいトマトは、当然ながら、煮込んでソースにしても味が濃いですね。冬のトマトだとどこか頼りなく感じるのが、夏のトマトは、煮ると、力強いうま味が満ちてくるのです。これまでいろいろな手法でトマトソースを試しましたが、ここ数年はこれがお気に入りです」
土鍋でトマトをへたごと煮て、プロセッサーでくだくという方法。風味づけは、ほんの少しのにんにくと三温糖のみ。まさに、トマトの生命力をそのまま凝縮させたソースです。
「へたごと煮る方法は、フランス料理のシェフに、講習会で習ったものです。それまで捨てていたへたの部分に、一番、トマトらしい味わいが詰まっているということを知りませんでした。半信半疑でしたが、煮上がりの風味のよさに驚きました。それなら、土鍋で煮れば、金属がじゃましないので、さらに風味が損なわれないはずと、試して、いまにいたります」
近年になって、トマトには、昆布と同じく、うま味成分のアミノ酸が豊富に含まれていることがわかってきました。だから肉や魚介と一緒に煮込むと相乗効果で料理がおいしくなります。また、トマトの赤色をつくり出すリコピン酸は抗酸化作用が強いことでも知られています。旬のいま、たっぷり摂りたいものです。
トマトソースのつくり方
夏の太陽をいっぱい浴びたトマトを使った保存食。旬のトマトを、へたごと、土鍋でゆっくり煮込むから、トマトの味がストレートに凝縮します。
材料(つくりやすい分量)
● ミディトマト(1個120~140gの小玉) | 5kg |
● にんにく | 3片 |
● 三温糖 | 大さじ5 |
※保存期間は冷蔵庫で1週間。
つくり方
1 トマトは洗って、水けをふく。へたごと縦に4等分に切る。にんにくは縦半分に切って芽を取り、包丁でたたく。
2 1のトマトをへたごと土鍋に入れ、ふたをせずに加熱する。ふつふつしてきたら1のにんにくを加え、さらに煮る。
3 30分ほどたったら三温糖を加え、へらで混ぜながら、鍋なかがふつふつしている状態を保ち、1~2時間煮込む。
4 スティックミキサーなどでなめらかになるまで攪拌する。鍋の中に入れられるミキサーがなければ、煮たトマトを取り出し、フードプロセッサーなどにかけ、鍋に戻す。
5 4が最初の1/3量になるくらいまで煮つめ、保存容器に入れて、冷蔵庫で保存する。すぐに使わない場合は、密閉袋に小分けにして冷凍すると便利。
◇ ◇ ◇
ペンネアラビアータ
赤とうがらしの辛味をぴりっと利かせて南イタリアの味
つくり方
オリーブオイル適量とたたいたにんにく1片を弱火で熱し、アンチョビーのみじん切り大さじ1と赤とうがらし1本のみじん切りを加えてなじませ、トマトソース1カップを加え、塩ゆでしたペンネにからめる。
<料理/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/小松宏子>
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった四季の保存食づくりをベースに、現代の生活でも無理なくできる、季節の食の楽しみを提案。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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