小麦粉やライ麦粉に水を混ぜ合わせて、自然発酵させた天然酵母、それがサワードゥです。これを元種にしてパンをつくります。サワードゥでつくったパンは、粉の風味を強く感じられ、ほんのりとした酸味もあり、かみしめるほどにおいしいパンです。料理家の真藤舞衣子さんに、小麦の全粒粉を使ったサワードゥのつくり方と、サワードゥを使ったイタリアパン「チャバタ」の焼き方を教えていただきます。材料も手順も驚くほどシンプル。家庭でも手軽に続けられます。
(『はじめてのサワードゥ ブレッド』より)
What is サワードゥ ブレッド?
サワードゥ ブレッド 5つの特徴
1 粉と水だけの発酵種
発酵種のサワードゥは、粉と水が材料。余計なものが入らないシンプルなパンづくりです。
2 育てる楽しみ
サワードゥは毎日目に見えて変化していきます。まるで植物を観察し、育てるような感覚です。
3 おいしい酸味
サワードゥの発酵過程で増える乳酸菌のおかげで、ほどよい酸味を感じられるパンに。
4 季節や家によって、味が変わる!?
気温や湿度、空気中に浮遊している菌。その違いが、パンの風味に現れることも。
5 こねないパン
こねる代わりにじっくり時間をかけて発酵させるから、粉の持つおいしさを最大限に引き出します。
全粒粉サワードゥのつくり方
サワードゥは「ライ麦粉や小麦粉に水を混ぜる」を5~10日繰り返して完成させます。
毎日半分捨てながら継ぎ足しする方法もありますが、捨てるなんてもったいない! と思い、私の場合は、捨てずにエサやり(粉と水を足すこと)を続けてつくります。
全粒粉サワードゥは、ライ麦と並び、発酵しやすいサワードゥです。
プチプチとした歯ごたえと香ばしさが特徴で、素朴な味わいが楽しめます。
point
1 毎日、同じ時間にエサやりをする
2 25~30℃の暖かいところにおく
3 雑菌が入らないよう、清潔な容器やへらを使う
4 混ぜるときは下から全体に混ぜる
最初に用意するもの
材料
● 強力全粒粉 | 50g |
● 水(浄水) | 40mL |
道具
● 保存容器 容量1.2L程度のもの
● ゴムべらまたはスプーン
準備
・ 保存容器、ゴムべらなどは煮沸するか、アルコールで拭くか熱湯をかけて消毒する。
つくり方
*夏は早めに完成し、冬は少し時間がかかるというように、温度や環境によってでき上るまでの日数に違いがあります。香りや膨らみ加減もあくまで目安です。
1日目
保存容器に分量の強力全粒粉、水を入れる。ゴムべらで粉っぽさがなくなるまでよく混ぜる。草っぽい香り。
ふたをのせ(きっちり閉めない)、常温におく。
2日目
見た目の変化はあまりない。草の香りが強くなっている。
強力全粒粉50g、水40mLを加え、全体に混ぜる。ふたをのせ、常温におく。
3日目
少し気泡が出てきて、干し草のような強烈な香り。
強力全粒粉50g、水40mLを加え、全体に混ぜる。ふたをのせ、常温におく。
4日目
上からも気泡が出てきて、混ぜると中にも気泡があるのがわかる。においは干し草の強烈な香り。
強力全粒粉50g、水40mLを加え、全体に混ぜる。ふたをのせ、常温におく。
5日目
急に膨らんできて、気泡も増える。香りは少し酸っぱく変化。
強力全粒粉50g、水40mLを加え、全体に混ぜる。ふたをのせ、常温におく。
6日目
さらに膨らんできて、横から見ても上から見ても気泡が全体に出てきたらでき上がり。香りは少し酸っぱい。
ゴムべらで持ち上げると、水分を含みながらもポソッと切れるくらい。
◎ 完成後すぐにパンづくりに使える。保存は冷蔵庫へ。週に二度はエサやり(強力全粒粉50g+水40mLを加えて混ぜる。粉と水はそれぞれ半量ずつでもOK)をし、安定する1か月後からは週に一度のエサやりを。パンを仕込む前日に冷蔵庫から出し、エサやりをして元気にしてから使う。
◎ 冷蔵保存後、気泡が少なくなった場合は「サワードゥの上部を半分くらい取り除き、強力全粒粉50g、水40mLを混ぜる」を2~3日繰り返すと、復活する。取り除いたサワードゥは、パンケーキやクッキーにするといい。
チャバタのつくり方(全粒粉サワードゥを使って)
その形から、イタリア語で「チャバタ(スリッパの意)」と名づけられたとか。二次発酵なしで、切りっぱなしで焼けるので手軽です。
外はサクッと、中はもちっ!
材料〔4個分〕
● A | |
・全粒粉サワードゥ | 100g |
・水 | 120mL |
・塩 | 4g |
・砂糖 | 8g |
● 強力粉 | 150g |
● 打ち粉 | 適量 |
つくり方
混ぜる
1 ボウルにAを入れ、泡立て器でよく混ぜ合わせる。強力粉をふるい入れ、カードで少しずつ、粉っぽさがほぼなくなるまで混ぜ合わせる。
2 ラップまたはぬれぶきんをかけ、10分ほど常温におく。
一次発酵
3 カードで生地をすくい上げ、5~6回折りたたむ。
4 保存容器に入れ、ふたをして冷蔵庫の野菜室に7~24時間おき、約1.2〜1.5倍に発酵させる。
成形
5 4に打ち粉をふり、保存容器の四つの壁面にカードを差し込み、容器を逆さにして生地をこね台に取り出す。
6 生地の下に手を入れ、気泡をつぶさないように軽くのばして長方形にし、奥と手前から生地を折って三つ折り、向きを変えて三つ折りにし、合わせ目をとじる。
焼く
7 下段の天板(またはバット)に湯適量(分量外)を入れ、オーブンを250℃に予熱する。
8 6の生地を裏返し、カードで4分割する。
9 天板にオーブンシートを敷いて8をのせ、ざるや茶こしで打ち粉をしてナイフで斜めに1本、 7~8mm深さにクープを入れる。
10 9の天板をオーブンに入れ、庫内の上部と側面に向かって水適量(分量外)を霧吹きで4~5回吹きつけ、250℃で20分焼く。
*電気オーブンの焼き時間を基本としています。ガスオーブンは火力が強いので、温度を10℃下げた方がいい場合があります。機種によって焼き加減に差がありますので、ご家庭のオーブンのクセをつかみましょう。
本記事は『粉と水だけの自家製酵母で作る はじめてのサワードゥ ブレッド』(文化出版局)からの抜粋です
〈撮影/竹内章雄 スタイリング/池水陽子 文/飯村いづみ〉
真藤 舞衣子(しんどう・まいこ)
料理家。東京生まれ。会社勤めを経て、京都の大徳寺内塔頭にて1年間生活をし、その後フランスのリッツ・エスコフィエに留学し、ディプロマを取得。菓子店勤務後、カフェ&サロン「my-an」をオープンし、料理家に。現在は料理教室やレシピ開発、テレビやラジオで活躍。おもに発酵料理を得意とし、料理を通じて環境を考えた暮らし方や食育を提案。著書は『ボウルひとつで作れる こねないパン』『和えもの』(主婦と生活社)、『からだが整う発酵おつまみ』『はじめてのみそ作り』(立東舎)など。今年6月には、最新刊『粉と水だけの自家製酵母で作る はじめてのサワードゥ ブレッド』(文化出版局)が発売された。
◇ ◇ ◇
粉に水を混ぜて、室内に放置するだけで完成するサワードゥ。
自然の力を借りて、一から発酵させるというおもしろさ、また、自宅で本格的なパンが焼けることから、病みつきになる人が急上昇中のパン作りです。
サワードゥの丁寧な解説と、毎日の食生活に取り入れたいベーシックなパンのレシピを紹介しています。