好きな布でたくさんつくれる、手づくりみつろうラップ

みつろうラップが植物素材のみでつくられていることから、「ボタニカルラップ」と名づけている安藤さん。

「体にも環境にもやさしいですよね。仕事柄、食品用ラップフィルムを使うことがよくあるのですが、なんとなく気になっていました。代わりのものはないかなと思っていたところ、みつろうラップの噂を聞いて。

それで、海外のウェブサイトで使い方やつくり方を調べたんです。ちょうど身近に養蜂家さんもいたのでお願いしたところ、みつろうを仕入れられることになって、よし！ と、つくり始めたんです」

手づくりする魅力は、「好きな色柄の布で、形を自由に、たくさんつくれるところ」と安藤さん。

はぎれなどを利用することもできます。細かい採寸や縫う手間もなく、工程もとてもシンプル。鍋やアイロンなど、家庭にある道具でつくれるところもお気に入りです。もちろん購入もできますが、手づくりする方がずっとお手頃だそう。

環境にやさしいラップづくりをみんなで楽しく共有したい

実は安藤さん、自分で手づくりして使うだけではなく、みつろうラップの輪をもっと広げたいとワークショップも開いています。

「自分でつくってみて、ああこれいい！ 広めたいって思いましたね。

使い捨てではなく何度も使えて、土に還るみつろうラップに実際に触れたり使ったりすることで、環境問題にちょっとだけ目を向けてもらうきっかけにもなりますし、自然と皆さんでいろいろな話をします。

それもまた、大事な機会だなと思って。ここでみつろうラップと出会った方が、別の場所でワークショップを開いてくれるようになったら、うれしいですね」

誰もが始めやすいようにと、安藤さんが考え出したのが薄い丸型の「みつろうシート」。みつろうにオイルとマツヤニを混ぜたものを、ペーパーカップに注いで固めたものです。

手でちぎって使え、ちょうどふきんのサイズくらいのラップが1枚つくれる分量。このままで保存できるのも、とても便利です。

「みつろうやマツヤニを湯煎で溶かすのにちょっと時間がかかるので、この“みつろうラップのもと”をまとめてたくさんつくっておけたらいいなと思って。小さなシートにしておけば、いつでもラップづくりができますし、これを皆さんに渡して簡単なワークショップができます。

『地球にやさしいことを』といってもなかなか伝わらないですが、これなら楽しみながらできます。環境が元通りになるわけではありませんが、次世代に少しでも役立てばいいなという思いですね。やっぱり、日常の積み重ねでしか、何事も変わらないと思うので」

お菓子づくりのときにバターやチョコレートをのせて計量したり、花束にくるっと巻いてプレゼントにしたり、包むことにとどまらず、幅広い使い方を楽しんでいる安藤さん。手づくりのみつろうラップは、暮らしのなかに、もうすっかり溶け込んでいるようです。

「ピクニックのお皿にもいいですよね。皆さん、使い始めたらいろいろな活用法が出てくると思います」

繰り返し使うたびにうれしくなり、心をほんのり満たしてくれるみつろうラップ。自分好みの布でいくつも手づくりすれば、使う場面もどんどん広がり、いまよりまた少し、気持ちのいい暮らしが始まるかもしれません。

〈制作／安藤美保　撮影／石川 奈都子　取材・文／山形恭子〉

教えてくれた人
安藤美保（あんどう・みほ）

兵庫・神戸元町「ネイバーフード」の店主。近郊の野菜や国内外の加工品、自家製スイーツなども扱っている。飲食にたずさわる友人と「ボタニカルラップ」の名でみつろうラップを広める活動を始め、不定期でワークショップを開催する。

※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです