(『天然生活』2019年10月号掲載/『天然生活web』初出2021年5月8日)
おおらかに、心を込めて、家しごと
タミさんは、日の出前、まだ暗いうちに起きます。大好きなお日さまに寝顔を見られてしまうなんて、とても恥ずかしいこと。だから身支度を整えてお日さまを待ちます。
やがて東の空が白み、朝日が街を照らしていきます。タミさんはベランダに出て、その美しい眺めに胸を躍らせながら、昇ってくる朝日に手を合わせるのです。
「お日さま、おはようございます。今日も一日、よろしくお願いいたします」
そうあいさつをし、朝日のもつ明るい気を体の中に入れれば、元気が満ちあふれてくるといいます。
そして神棚に松をあげ、お祈りをします。神さまはとてもきれい好き、だからその御心にかなうよう、掃除と整理整頓をします。
自分自身も自然の一部だと思っているタミさんのベランダは、緑がいっぱい。植物たちに水やりをするのも朝の日課です。
そして、タミさんは使えるものは捨てない「もったいない主義者」でもあります。古い新聞やチラシなどを使いやすい大きさに切ったり、あきびんを整理したりして、朝の時間を過ごします。
朝食は天然酵母のパンなど。お昼は息子さんが育てた無農薬のとびきりおいしい野菜を使った、シンプルなごはん。
午後からは、ほぼ毎日、来客があります。もともと大家族で育ち、家庭をもってからもご近所さんやお友達を家に招き入れてきたタミさんは、みんなで楽しく過ごすのが好き。
おしゃべりをしたり、お茶を飲んだり、ゆったりとおおらかに時間を過ごします。
寝る前に忘れてはいけないのが、翌日用の水だし(*)づくりと食材の確認。明日もまた充実して生きるための準備をしてから、休むのです。
* 水だしのつくり方
800mLほどの水に昆布1枚といりこ(15〜20g)を入れてひと晩置く。夜寝る前につくって翌日に使います。
桧山タミさんのある1日
朝5時前 〜
起床。乾布摩擦。
きちんと身支度をしてから、ベランダに出て、お日さまにごあいさつ。
神棚に松を祀り、万物の神さまにお祈りする。
NHKラジオを聴きながら、ベランダの植物に水やり、掃除(棚を拭いたり)、片づけ(新聞や段ボールを切ってたたんだり、保存びんに調味料を詰めたり、ビニール袋をたたんだり)、洗濯をする。
7時 ~
朝食(この日は、天然酵母の食パン、紅茶)。新聞を読む。
12時 ~
息子さんと一汁二菜の昼食。
13時 〜 17時
来客など。
15時 ~
お茶の時間。
18時 ~
夕食。
20時 ~
お風呂。浴室で衣類も洗い、干す。
明日の食事の準備(いりこと昆布の水だしをつくる)。掃除、片づけ。
21時30分 〜 22時
就寝。
動画:桧山タミさん95歳。いま、伝えたい想い
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<撮影/繁延あづさ 取材・文/土屋 敦>
桧山タミ(ひやま・たみ)
1926年、福岡県生まれ。17歳から料理研究家・江上トミ氏に師事。30代半ばで独立。52歳のとき、現在の地に「桧山タミ料理塾」を移し、40年になる。著書に、愛情と自然の恵みを大切にする家庭料理のありようと、生き方の哲学を余すところなく記した『いのち愛しむ、人生キッチン』、小学校で行った授業をもとに幸せな未来のための話を集めた『みらいおにぎり』(ともに文藝春秋)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです