• 視線の先の、小さな花。そのささやかな存在が、肩の力を抜いてくれます。好きな花を、ただ一輪。そこから空気が、温かに変わっていくのです。そんな、暮らしを彩る小さな花しつらいについて、フラワースタイリストの平井かずみさんに伺いました。今回は、長く目を楽しませてくれる、バラの実を使った花生けを教わります。
    (天然生活2023年2月号掲載)

    小さな花しつらいが、毎日の安らぎに

    たとえば、小さな器に1種類、あるいは1輪。手のひらに収まるほどの、花しつらい。ところがこのささやかな存在こそが、気ぜわしい毎日の安らぎとなるのです。

    「小さくしつらえる草花は、生ける手間も小さいですから、せわしないなかでも無理なく生けられます。花生けというと、特別な日のしつらいを想像する方も多いのですが、なんでもない日常にこそ、草花を取り入れ、その力を感じていただけたら、と思っています」

    花を生けた空間には、“風”が生まれると平井さんは話します。そしてその“風”こそ、私たちが必要としているものであると。

    「空間を洗うような“風”を感じれば清々しい気持ちになり、おのずと心に余裕が生まれます。さらに大切なのは、直に植物に触れること。その柔らかな茎に触れ、香りの広がりを楽しみながら花を生ける。それだけでも心の持ちようが変わっていくように思います」

    1輪の花、手のひらほどのブーケ。小さいからこそ目を凝らし、真摯に向き合う。

    そこには、これまで気づかなかった草花の美しさと、そこから得られるたしかな安らぎがあるのです。

    実をぎゅっとまとめた、力強い花生け

    小ぶりな花器に、1種類だけ。口からあふれるような赤い実は、寒さをゆるませる灯りのよう。

    画像: 実をぎゅっとまとめた、力強い花生け

    花材:バラの実

    花器:菊地 亨さんの陶の花器/口径10×高さ15cm

    長く目を楽しませてくれる、実ものを使って。

    大ぶりの枝1本手に入れるだけで、このような力強い花生けを楽しめます。

    小枝に切り分けて生けただけの素朴なあしらいですが、口がややすぼまった器を選ぶと、実がぎゅっとまとまり、凛と潔い表情に。

    その内に秘めた強さは、内省的になるこの季節に、ふさわしい姿に思えます。

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    <スタイリング/平井かずみ 撮影/徳永 彩 取材・文/福山雅美>

    平井かずみ(ひらい・かずみ)
    フラワースタイリスト。花の教室「木曜会」や全国でのワークショップを開催。2022年から新たな出会いの場として東京・恵比寿に「皓 SIROI」と名付けたアトリエをオープン。 https://www.hiraikazumi.com/

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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