(『天然生活』2022年3月号掲載)
夫婦で一緒に探る新しい暮らしと家事分担のバランス
1年半前に東京から夫の実家がある鹿児島県へ移り住んだ門倉さん。生活もだいぶ変わりました。
「数年前に定年退職した夫が、前よりも家のことに携わるようになりました。片づけに関しても、夫と分担することが増えたかも」
ドイツ人の母親と日本人の父親の元で育ち、さまざまな考え方に触れてきて思うのは、日本の女性は家事や片づけに関して「こうすべき」「私が全部しなくては」と考えてしまう人が多いということ。
「もっと自分を解放してもいいと思うし、家族に任せることで自分では気づかなかった発見があるかもしれない。家を自分だけで切り盛りしようとせず、夫と常に話し合いながら、ふたりで空間や暮らしをつくっていきたいですね」
やめたこと1
居室にコートを掛けること
⇒コート掛けを玄関に設置し、室内がすっきり
「東京のマンションで暮らしていたときはスペースがなく、書斎のドアにフックを取り付けて自分たちや来客のコートをかけていましたが目にうるさく、ストレスでした」
鹿児島の家では玄関に扉つきのコート掛けスペースを設置。「すぐにしまえるのでうれしい」
やめたこと2
ばらばらに隠して収納すること
⇒1カ所にまとめることで、出し入れしやすく
マンション暮らし時代、掃除機はクローゼットの中、アイロン台はドアの後ろなど、道具をあちこちに隠して収納。
「いまの家では、小さな部屋に掃除道具やアイロンをまとめてしまっています。片づけるときも出すときもそこに行けばいいので、楽です」
やめたこと3
ものを増やすこと
⇒広い空間を優先して居心地がよくなった
現在暮らすのは、東京時代のマンションと比べて広くなった一軒家。それでも、ものや収納スペースを増やすのではなく、廊下を広くとるなど、空間のゆとりを優先しました。
「東京では本棚が2台ありましたが、引っ越してから1台は食器棚に。本はもう1台の本棚と、いまの家にあるつくりつけの本棚に収まる量に減らしました。スペースにゆとりがあるとすごく気持ちがいいし、片づけにばかり時間をとられることもありません。これから年を重ねていくにあたって、ものはなるべく増やさないようにしたいです」
やめたこと4
夫の片づけに口出しすること
⇒お互いが気持ちよく片づけを続けられる
夫の片づけについて「もうちょっとこうすればいいのに」と思うことも。
「たとえば夫の庭仕事の道具のしまい方についてもいいたいことはあるのですが、彼の流儀があると思うのでぐっと我慢。お互いが気分よく家事をすることがなにより大事だと思います」
やめたこと5
自分が先回りして片づけをすること
⇒分担が自然にできて、負担が軽減
「夫が仕事をしていたころは早朝に出て夜帰宅する生活。片づけもほとんど私がしていました。定年退職して鹿児島で暮らすようになってから、夫も生活のことが少しずつわかってきたみたい。最近は朝、自分で毛布をたたんでいますし、去年の冬は初めて自分で衣替えをしていました」
門倉さんも自分ばかり先回りして片づけをしなくなりました。
「なんでも先回りしてやってしまうと、夫の片づけスキルも上がらないし、自分ごとにならないですよね。夫のペースもあるでしょうし、なるべく任せるようにしています」
やめて失敗したこと
電子レンジを置くのをやめたこと
「これは失敗ではないのですが、いまの暮らしに合わせて変えたこと。以前はスペースがなくて電子レンジを置くのをやめたのですが、いまの家は場所ができたので復活させました。これがあれば夫も私に頼らず、気軽に自分で食事を温めなおしたりできるので便利です」
<イラスト/須山奈津希 取材・文/嶌 陽子>
門倉多仁亜(かどくら・たにあ)
雑誌や書籍などで料理やドイツのライフスタイルについて紹介している。著書に『心地よく、ていねいに、ゆとりを楽しむこれからの暮らし方』(扶桑社)など。https://www.tania.jp/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです