• 2020年、東京を離れ鹿児島に拠点を移した料理家の門倉多仁亜さん。ドイツ、東京、鹿児島。暮らす場所は変わっても、ずっと変わらないのは、規律正しさと、ほっと力を抜く休息をバランスよく取り入れることでした。門倉さんの暮らしをラクにまわすコツを伺いました。
    (『暮らしのまんなか』vol.35より)

    多仁亜さんの暮らしをラクにする心持ち

    「やるべきことはやる規律」と「やらなくていいことはやらない」潔さが大事

    【その1】ちゃんと休む

    画像: 【その1】ちゃんと休む

    日曜にパンケーキを焼くと、気分が休日モードに。薄力粉にベーキングパウダー、重曹、砂糖、塩、牛乳と卵、油、さらには酢を加えるのがきれいに膨らませるコツ。

    週末には家事をせず、ゆっくり休むのは、ドイツ人の母から教わったこと

    【その2】あとの自分のためにいますることを考える

    画像: 【その2】あとの自分のためにいますることを考える

    キッチンの「朝食コーナー」。パンやトースターなどと並べてエスプレッソマシーンを設置。引き出しにはエスプレッソ用のカップ&ソーサーを。

    ひとつ洗い物が終わったら、すぐに蛇口まわりをひとふき。習慣にすることで、水垢がつかずいつもシンクまわりがピカピカに

    【その3】面倒くさくなる前にいまやる

    画像: 【その3】面倒くさくなる前にいまやる

    ドイツでは、用途別にさまざまなブラシが売られているそう。これは高い位置のほこりを払うためのもの。

    洗濯機を置いた家事室には、掃除や洗濯、家のメンテナンスに必要なものがすべて集められている。

    手前のかごは、これから洗濯するもの、奥が乾燥機にかけ終えたもの。正面の窓の下のかごは、洗濯物を干しに行くときに使う。

    ドイツから、東京、鹿児島へ

    日本人の父とドイツ人の母の元に生まれた門倉多仁亜さん。料理の仕事を始めたのは、成り行きだったそう。

    もともとは証券会社に勤務し、同じ会社で知り合った夫と結婚。彼が会社を辞めてロンドンに留学するというので、多仁亜さんも退社。一緒についていくことになりました。

    「私は『夫を支える』タイプではないとわかりました。夫が『これから世界中の人とともに学んでいくぞ』とがんばる姿に嫉妬しちゃったんです。それでル・コルドン・ブルーに料理を習いに行くことにしました」

    無事ディプロムを取得し帰国すると、友人に「料理を教えて」と頼まれたのが、料理教室を始めるきっかけに。さらに、NHKのテレビ番組、ドイツ語講座から声がかかり、ドイツ料理を教えることになりました。

    「フレンチならともかく、だれもドイツ料理なんて知りたいと思わないでしょ?と思っていたけれど、やってみたら、そこには私のストーリーがあったんです。『この料理はおばあちゃんがこういうときにつくっていました』とか。ああ、料理ってこういうことなんだ、って」

    若いころはドイツと日本の狭間でその違いに悩んだこともあったそう。

    やっとラクになったのは最近のこと。「違いはあるけれど、いま私は幸せだし、どっちが正解ってことはない。そのことがやっとわかりました。もしかしたら、私は料理を通してそのことを伝えたいのかもしれません」

    鹿児島の敷地内にはアトリエを建て、いずれは教室を開く予定。畑では野菜も育てはじめました。

    だれかと同じでなくていい。自分の暮らし方は自分で決めていい。ドイツと日本、鹿児島をつないで、多仁亜さんがこれから何を発信されていくか楽しみです。

    画像1: ドイツから、東京、鹿児島へ


    <撮影/亀山ののこ 取材・文/一田憲子>

    門倉多仁亜(かどくら・たにあ)

    料理家。日本人の父とドイツ人の母の元に生まれ、日本、ドイツ、アメリカで育つ。夫の留学のためロンドンへ。ル・コルドン・ブルーでグラン・ディプロムを取得。帰国後、東京で料理教室を開始。2020年に鹿児島に拠点を移す。ドイツ流の暮らし方を基に独自のシンプルライフを提案。https://www.tania.jp/

    画像2: ドイツから、東京、鹿児島へ

    <訪ねた人>
    一田憲子(いちだ・のりこ)

    編集者・ライター。企画から編集、執筆までを手がける『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(共に主婦と生活社)を立ち上げ、取材やイベントなどで、全国を飛び回る日々。著書に『もっと早く言ってよ』(扶桑社)、『すべて話し方次第』(KADOKAWA/3月28日発売予定)ほか多数。サイト「外の音、内の香 」を主宰。https://ichidanoriko.com/
    「暮らしのおへそラジオ」を隔週日曜日配信中。

    ※記事中の情報は『暮らしのまんなかvol.35』掲載時のものです

    * * *

    別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.38

    別冊天然生活
    『暮らしのまんなか』vol.38

    別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.37

    amazon.co.jp

    一田憲子さんが編集を手がける『暮らしのまんなか』vol.38。暮らしの実例12軒でお見せします。

    1章は「自然とつながって暮らす」。いつものキッチンの水道の下に、大きな海がつながっているとしたら……。そんな視点で暮らしを点検したら、洗剤の選び方や、器の洗い方が変わってくるかもしれません。ちょっとした「意識」の変化をきっかけに、自然とつながって暮らすことを選んだ、3人の暮らし方を紹介します。

    2章は「私時間を過ごすリビング」。忙しい毎日のなかでは、家事や育児に追われていつの間にか「私自身」が迷子になりがちです。そんなときは、一番多くの時間を過ごすリビングを見直してみませんか? 本をじっくり読んだり、刺しゅうをしたりすれば、大事なものを思い出すことができそうです。

    3章は「サステナブル=持続可能な収納」。あれこれ収納グッズをそろえて、部屋を片づけても、1週間もしたら、またごちゃついて……。収納で一番大事なことは、サステナブル=持続可能であるということ。「私でもできること」を見つけ、長持ちする収納システムをつくってきた、5人を取材しました。



    This article is a sponsored article by
    ''.