(『天然生活』2023年6月号掲載)
ぬか漬けは野菜の再生工場。私は冷蔵庫で続けています
比較的コンパクトな容器から、こんなにたくさん!? と思うほどの野菜が次々と現れます。
「ぬか漬けは収納と同じ。適材適所にぴったり収めてあげるのが大事なんですよ」と笑う松田美智子さんのぬか漬け歴はなかなかのもの。
子どものころから母のぬか漬けを食べて育ち、嫁入り道具のひとつとしてぬか床を分けて持って来たそう。
「昔は大きな甕(かめ)でたくさん漬けるのが日常でしたが、いまはひとり分ですし、たくさん漬けても食べきれません。出張で家を空けることも多く、ダメにしてしまうこともありました」
そんな松田さんがたどり着いたのが冷蔵庫で漬ける方法。発酵の速度はゆっくりだけれど、温度が安定していて失敗しにくいのだとか。
「常温でやるより減塩にできるのもよい点です。ときどき常温に出して頻繁にかき混ぜたり、大きなボウルにすべてを出して大きく混ぜたりすることもあります」
松田さんいわく、ぬか床にはふたつの菌があって容器の中で上部と下部に分かれるため、それらを混ぜることでぬかの状態が安定するそう。
「料理もぬか漬けも科学ですね。どうして混ぜるのか、混ぜることでどう変化するのか、一歩踏み込むことで知識となり、料理の経験値がグンと上がると思いますよ」
収納と同じ。適材適所を考えて
根菜類は容器の下、パプリカは空洞部分に小さなにんじんを詰めて。その横のすき間にアスパラガスを。むやみに入れるのではなく、きちっと詰めるのが松田さん流です。
「大根、きゅうり、にんじんなどは縦半分に切ると、冷蔵庫でもひと晩で浅漬けになりますよ」
松田さんのぬか漬け
盛りつけ次第でおもてなしにも
ぬかを洗い流して水けをしっかりふき取り、薄切りにしたり、やや大きめに切ったりして器に盛りつけます。
「にんじんには炒りごまを、大根には実山椒の塩漬けをのせました。こんなふうにすれば、来客時の前菜に最適。彩りもよく、箸休めにもなり喜ばれます」
冷蔵庫なら、お手入れも最小限
ぬか床にとってよくないのは急激な温度変化。マンションなどの集合住宅は気密性が高く、夏場は高温になりよくない影響も。
その点、一定の温度を保てる冷蔵庫はその心配がない。
「冷蔵庫なら1日おきくらいに混ぜれば大丈夫。余裕をもって続けられると思います」
古漬けは肉と合わせて炒めものに
うっかりぬか床から出し忘れて古漬けになってしまうということも。そんなときは、炒めものにするのが松田さんの定番。
「豚バラの薄切りと合わせれば、調味料なしで奥行きのある味になりますよ。野菜の下ごしらえもいらないし、短時間でパッとつくれます」
ときどき、大きく混ぜて菌を均一に
冷蔵庫で漬けるなら、週に一度は常温において、朝晩の2回はかき混ぜてぬかの位置を替えると、うんとおいしくなると松田さん。
また、2~3カ月に一度くらいは大きなボウルに取り出して混ぜると、菌が均一になって発酵も進み、ぬか床が安定するのだとか。
松田さんのぬか漬けメモ
保管場所:冷蔵室
容器:野田琺瑯の「ぬか漬け美人」
ちょい足しアイテム:ホワジャオ、和からし、粉だし、青梅、山椒など
* * *
<写真/山川修一 構成・文/結城 歩>
松田美智子(まつだ・みちこ)
基本を押さえた美しくきれいな料理に定評があり、調理道具や食器の製作にも携わる。最新刊は『別冊天然生活 5つの調理法で大人の料理バイブル100』 (扶桑社ムック)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです