(『天然生活』2019年12月号掲載)
部屋を温めるのではなく、自分自身を温める
妊娠中、足がこむらがえりを起こすことを助産師さんに相談したところ、冷えとりを勧められたという早川ユミさん。
靴下の重ねばきから始め、あれこれ試して、なんらかの変化を実感できたものが残ってきたそう。握手したときに、ほかの人より体温が上がっていると感じることも多いといいます。
「部屋を温めるのではなく、自分自身を温める、がモットー。私たちのからだは、上半身が36℃あっても、下半身は31℃くらいといわれています。
冷えがあると、気や血液のめぐりが悪くなり、からだがモヤモヤして調子が悪くなります。意識的に温めることで、自然治癒力を高めることが大切です」
早川ユミさんが実践している、3つの冷え対策
1 食べもので体をいたわる
心がけていることは大まかに3つあり、ひとつめは、食べものによる養生。
からだを温めるにんにく、しょうがを畑で栽培していることで、惜しみなく使えるのは何よりうれしいことだそう。
赤い皮が印象的なにんにくは、熱帯アジアの品種。土佐にんにくという在来種もつくっています。
少し意外だったのは、一般的にからだを冷やすといわれる、生の葉ものサラダが食卓の定番なこと。
「葉っぱをむしゃむしゃ食べることが、人間には必要なのでは? と直感して。生野菜を食べることで、細胞の奥にあるミトコンドリアが活性化するというのを、自分のからだで実験中です。
植物の酵素は50~60℃の加熱で壊れると聞いたこともありましたが、頭で考えるより直感も大事だなって。このサラダは家族みんなが大好きで、ないときはシュンとしています」
2 からだを動かして、気と地をめぐらせる
ふたつめは、からだを動かすことで、気と血をしっかりめぐらせ、温めること。
日課である畑仕事でたっぷり汗をかいたあと、自家製の酵素ジュースを飲み干すのは至福のひととき。
さらに、2007年からは、夫の哲平さんとともに、高知で老子法を説く中内雅康先生に師事し、丹田呼吸法や、気をめぐらせるさまざまな方法を教わっています。
「太陽や月や樹のエネルギーを取り入れて、自然をお手本に生きる」という老子法の教えはユミさんの大地に根ざした暮らしと重なり、自分らしく生きる哲学ともなっているのです。
3 肌にふれるものは自然素材で手づくりする
3つめは、肌に触れるものをなるべく手づくりすること。
古代中国で衣服を、からだをいやす薬と考えていた女性たちのように、オーガニックコットンなどの自然素材で、肌をやさしく温める下着やスパッツをちくちくと縫います。
手づくりすることで、いつでも同じものが手に入るという安心感も。
畑の野菜に霜よけの覆いをするように、自分を気にかけ、いたわることで、凍てつく時季も生き生きと過ごせるのです。
〈撮影/河上展儀 取材・文/野崎 泉 トレース/佐々木真由美〉
早川ユミ(はやかわ・ゆみ)
布作家。アジアの手織り草木染めの布で衣服をつくり、大地に根ざして暮らす。冷えとりや丹田呼吸法について綴った著書に『からだのーと』(自然食通信社)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです