• 林陽寺副住職・岩水ゆきゑさんの、一日を気持ちよくスタートするための「朝の時間割」を拝見します。坐禅をし、頭と心をまっさらにして、いま向かうべき方へ。玄関や部屋などの“場”も整えて、みんなが心地よく過ごせる空間をつくっていきます。
    (『天然生活』2023年5月号掲載)

    心をまっさらにして、いま向かうべき方向へ

    お寺での一日は住職との読経から始まり、その後、坐禅をします。

    「10分ほどのことですが、坐禅をやるとやらないでは全然違う。ヨガもそうですが、体に小さな力しかかからないので呼吸が楽になる。頭のなかがおのずとクリアになり、向かうべき方向が見えてきます。座禅後は力がわいて、テキパキとスムーズに動けるんです」

    岩水さんのある日の「朝の時間割」

    05:00 起床、舌と歯を磨き、白湯を飲む。身支度し、部屋をさっと整え、お寺へ向かう
    06:00 朝課、ご住職とともに本堂で読経
    06:40 坐禅
    07:00 朝粥をいただく
    08:00 玄関の掃除。線香で場を清めてから掃き掃除。庭の草花を摘んで部屋に活ける
    08:30 座敷やトイレなどもう1カ所掃除するか、御朱印が少なければ書いて補充する
    09:00 裏山の氏神様にごあいさつ。自然を感じながら深呼吸する

    06:00朝課 住職とともに本堂で読経

    林陽寺は、曹洞宗のお寺。ご本尊である薬師如来様に読経します。

    「今日も一日、よろしくお願いしますと仏様にごあいさつします。皆さんが朝、お仏壇に手を合わせて、ご先祖様にごあいさつされることに通じますね」

    この日は毎月1日と15日に行う祝祷諷経(しゅくとうふぎん)にあたり、祈祷太鼓を鳴らして読経し、万物の平穏無事を祈願。

    画像: 796年弘法大師が草創。大師自ら彫ったと伝わるご本尊、薬師如来尊像の前で祝祷諷経を行う

    796年弘法大師が草創。大師自ら彫ったと伝わるご本尊、薬師如来尊像の前で祝祷諷経を行う

    06:40坐禅

    一日を気持ちよく始めるうえで、坐禅は大切な時間。

    大衣をまとい、座布を敷いて、姿勢を正して。取り立てて時間は測りませんがいつも10分ほど、心静かに座ります。

    「坐禅をしているときは、頭のなかが静かになります。いろんな思いや考えを手放し、まっさらになると、自分がいま向かうべき方向が自ずと見えてきます」

    画像: 曹洞宗の黒色の大衣を身にまとって。林陽寺では第2日曜の朝8時に坐禅会を開催。作法や心構えも伝える

    曹洞宗の黒色の大衣を身にまとって。林陽寺では第2日曜の朝8時に坐禅会を開催。作法や心構えも伝える

    07:00朝粥をいただく

    朝食はお粥に、お菜を添えて。自家製の梅干しや煎り大豆の酢漬け、にんじんとブロッコリーの軸のきんぴらなど。

    修行中は典座寮の菜頭を担当し、食材を使いきる工夫を学んだそう。

    「冷やごはんでお粥にすることも。余さずいただけて、朝課の前に火にかけておけばでき上がるので。ひとつひとつの命に感謝していただきます」

    画像: 土鍋で生米から炊いたお粥は滋味深い。お箸と匙は手元を左に置き、食べ終えたら右に

    土鍋で生米から炊いたお粥は滋味深い。お箸と匙は手元を左に置き、食べ終えたら右に

    08:00玄関の掃除

    「修行中は常に掃除していました。料理しながら、片づける。そうすれば手際もよくなるし、整っていると作業もはかどります。ふだんちょっとずつ積み重ねれば、掃除に大きな力を使わずにすみます」

    お客さまを迎える玄関は、毎朝掃き掃除。

    「祖母に教わったのは、すみっこの掃除。忙しいときほど、すみっこを意識してきれいに」

    画像: まず玄関の香炉に線香をともし、香りによって清める

    まず玄関の香炉に線香をともし、香りによって清める

    画像: 玄関の内から外へ掃き掃除。最後に柄杓で水まきするのが、岩水さんの習慣

    玄関の内から外へ掃き掃除。最後に柄杓で水まきするのが、岩水さんの習慣

    08:15庭の草花を摘んで部屋に活ける

    庭には四季折々にさまざまな花が咲きます。

    掃除を済ませたら、花鋏を手に庭へ出て、見頃の花を摘んで部屋に飾ります。

    「小学生のころ、部屋を片づけたら、裏山で野花を摘んできて飾り、ラジオを聴きながら紅茶を飲むような子でした。部屋をきれいにするのがもともと好きなんですね。整った場に花を飾るとほっとします」

    画像: 春間近のこの日は、庭先に咲く水仙の群生から2本摘んで、茶室の床の間に

    春間近のこの日は、庭先に咲く水仙の群生から2本摘んで、茶室の床の間に

    08:30御朱印を書く

    御朱印が少なくなっていたら、9時までに書いておく。水墨画を嗜んだ祖父である、先代住職が使っていた書斎で。

    「子どものころ、書斎をのぞくと祖父がよく抹茶を点ててくれました」

    天井画や襖絵に作品が残されます。

    「しばらく書いていないと思うように手が動かないので、できれば一日に1回筆を持つ時間をもちたいですね」

    画像: 書もまた心落ち着く時間。「無心になれるから、写経もおすすめです」

    書もまた心落ち着く時間。「無心になれるから、写経もおすすめです」

    画像: 「心」と「空間」を清める朝習慣で、日々を心地よく暮らす。林陽寺副住職・岩水ゆきゑさんの“心を整える”朝の時間割

    一枚一枚、心を込めて。ほかに、ご住職直筆の絵が入った御朱印も。



    〈撮影/千葉亜津子 取材・文/宮下亜紀〉

    岩水ゆきゑ(いわみず・ゆきえ)
    岐阜市にある曹洞宗の寺院、林陽寺副住職。NYハタラジャヨガ指導養成コース200時間を修了し、ヨガ教室「凪の木」を主宰。メキシコへ留学し、スペイン語の通訳としても活動。修行中は典座寮の菜頭を担当し、精進料理教室も行う。お寺ではマルシェや音楽会、坐禅や写経のワンコイン修行(参加費500円)も。インスタグラム@housetsu_yukie

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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