(『天然生活』2023年5月号掲載)
▼“心を整える”朝の過ごし方の記事一覧
毎朝10分の「坐禅」で、1日を心静かにスタート。林陽寺副住職・岩水ゆきゑさんの“心を整える”朝時間
ラジオパーソナリティー・クリス智子さんの“心を整える”朝時間「五感が喜ぶ」朝の習慣で、自分らしく流されない暮らしを
毎日6時前に起き「朝の忙しさ」を手際よく楽しむ。ラジオパーソナリティー・クリス智子さんの“心を整える”朝の時間割
毎朝6時、愛猫のモーニングコールで目覚める「幸せ」な朝の始まり。料理家・麻生要一郎さんの“心を整える”朝時間
朝起きて「やること」を書き出し、1日を穏やかにうまくまわす。料理家・麻生要一郎さんの“心を整える”朝の時間割
「夕方の自分」がラクになる家事を朝こなし、毎日を元気に過ごす。ファームキャニング・西村千恵さんの“心を整える”朝時間
朝の家事は「すき間時間」にできる範囲で、気持ちを軽く。ファームキャニング・西村千恵さんの“心を整える”朝の時間割
心をまっさらにして、いま向かうべき方向へ
お寺での一日は住職との読経から始まり、その後、坐禅をします。
「10分ほどのことですが、坐禅をやるとやらないでは全然違う。ヨガもそうですが、体に小さな力しかかからないので呼吸が楽になる。頭のなかがおのずとクリアになり、向かうべき方向が見えてきます。座禅後は力がわいて、テキパキとスムーズに動けるんです」
岩水さんのある日の「朝の時間割」
05:00 起床、舌と歯を磨き、白湯を飲む。身支度し、部屋をさっと整え、お寺へ向かう
06:00 朝課、ご住職とともに本堂で読経
06:40 坐禅
07:00 朝粥をいただく
08:00 玄関の掃除。線香で場を清めてから掃き掃除。庭の草花を摘んで部屋に活ける
08:30 座敷やトイレなどもう1カ所掃除するか、御朱印が少なければ書いて補充する
09:00 裏山の氏神様にごあいさつ。自然を感じながら深呼吸する
06:00|朝課 住職とともに本堂で読経
林陽寺は、曹洞宗のお寺。ご本尊である薬師如来様に読経します。
「今日も一日、よろしくお願いしますと仏様にごあいさつします。皆さんが朝、お仏壇に手を合わせて、ご先祖様にごあいさつされることに通じますね」
この日は毎月1日と15日に行う祝祷諷経(しゅくとうふぎん)にあたり、祈祷太鼓を鳴らして読経し、万物の平穏無事を祈願。

796年弘法大師が草創。大師自ら彫ったと伝わるご本尊、薬師如来尊像の前で祝祷諷経を行う
06:40|坐禅
一日を気持ちよく始めるうえで、坐禅は大切な時間。
大衣をまとい、座布を敷いて、姿勢を正して。取り立てて時間は測りませんがいつも10分ほど、心静かに座ります。
「坐禅をしているときは、頭のなかが静かになります。いろんな思いや考えを手放し、まっさらになると、自分がいま向かうべき方向が自ずと見えてきます」

曹洞宗の黒色の大衣を身にまとって。林陽寺では第2日曜の朝8時に坐禅会を開催。作法や心構えも伝える
07:00|朝粥をいただく
朝食はお粥に、お菜を添えて。自家製の梅干しや煎り大豆の酢漬け、にんじんとブロッコリーの軸のきんぴらなど。
修行中は典座寮の菜頭を担当し、食材を使いきる工夫を学んだそう。
「冷やごはんでお粥にすることも。余さずいただけて、朝課の前に火にかけておけばでき上がるので。ひとつひとつの命に感謝していただきます」

土鍋で生米から炊いたお粥は滋味深い。お箸と匙は手元を左に置き、食べ終えたら右に
08:00|玄関の掃除
「修行中は常に掃除していました。料理しながら、片づける。そうすれば手際もよくなるし、整っていると作業もはかどります。ふだんちょっとずつ積み重ねれば、掃除に大きな力を使わずにすみます」
お客さまを迎える玄関は、毎朝掃き掃除。
「祖母に教わったのは、すみっこの掃除。忙しいときほど、すみっこを意識してきれいに」

まず玄関の香炉に線香をともし、香りによって清める

玄関の内から外へ掃き掃除。最後に柄杓で水まきするのが、岩水さんの習慣
08:15|庭の草花を摘んで部屋に活ける
庭には四季折々にさまざまな花が咲きます。
掃除を済ませたら、花鋏を手に庭へ出て、見頃の花を摘んで部屋に飾ります。
「小学生のころ、部屋を片づけたら、裏山で野花を摘んできて飾り、ラジオを聴きながら紅茶を飲むような子でした。部屋をきれいにするのがもともと好きなんですね。整った場に花を飾るとほっとします」

春間近のこの日は、庭先に咲く水仙の群生から2本摘んで、茶室の床の間に
08:30|御朱印を書く
御朱印が少なくなっていたら、9時までに書いておく。水墨画を嗜んだ祖父である、先代住職が使っていた書斎で。
「子どものころ、書斎をのぞくと祖父がよく抹茶を点ててくれました」
天井画や襖絵に作品が残されます。
「しばらく書いていないと思うように手が動かないので、できれば一日に1回筆を持つ時間をもちたいですね」

書もまた心落ち着く時間。「無心になれるから、写経もおすすめです」

一枚一枚、心を込めて。ほかに、ご住職直筆の絵が入った御朱印も。
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〈撮影/千葉亜津子 取材・文/宮下亜紀〉
岩水ゆきゑ(いわみず・ゆきえ)
岐阜市にある曹洞宗の寺院、林陽寺副住職。NYハタラジャヨガ指導養成コース200時間を修了し、ヨガ教室「凪の木」を主宰。メキシコへ留学し、スペイン語の通訳としても活動。修行中は典座寮の菜頭を担当し、精進料理教室も行う。お寺ではマルシェや音楽会、坐禅や写経のワンコイン修行(参加費500円)も。インスタグラム@housetsu_yukie
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです