(『天然生活』2021年3月号掲載)
自然の豊かさを享受しながら、ものづくりを行う喜び
岐阜の山奥で服づくりを行っている「石徹白(いとしろ)洋品店」の平野馨生里(かおり)さん。
布を使い切るだけでなく、草木染め等、環境負荷の小さい服づくりを行い、評判を得ています。
元々は東京で暮らしていたという平野さん。自然の豊かさを享受し、自分の手でものをつくり、喜びにつながっていくといういまの毎日こそが、持続可能な暮らしの実践だと感じているのだそう。
そんな平野さんに、環境に配慮した暮らしの取り組みを教えてもらいました。
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前回のお話はこちら▼
平野さんの、4つの持続可能な取り組み
1 むだなく布を裁断する
平野さんが服づくりのベースにしているのは、石徹白に古くから伝わるたつけや越前シャツなどの民衣。これらはカーブのない直線断ちでつくられるため、布のむだがないデザインです。
「一般的な洋服づくりでは、大量に出るはぎれがもったいなくて、すごくストレスでした。古くから伝わる日本の和裁の技術は、物を大切にする精神にあふれていると思います」
2 身の周りの植物で、布を染める
桜、ヒメジオン、桑の葉、栗、枇杷の葉など、草木染めに使われる原料は、身近に採れるものがほとんど。
「藍とマリーゴールド以外は、自生している植物を使っています。植物を採ってきては煮て、色が出たり出なかったりと、化学実験のように楽しんでいます」
ごみの日に拾ってきた錆びた釘を酢につけ鉄媒染液をつくったり、薪ストーブの灰も媒染にしたりと、徹底して自然環境に配慮している。
3 動物と暮らして、繊維を学ぶ
2019年からヤギと、2020年6月からはヒツジと暮らしている平野家。
「ヤギは市内でも飼っている人が多く、家の周辺や畑に生える雑草を食べてもらっています。ヒツジからは、羊毛を取りウールという素材について学ばせてもらおうと思っています」
ヒツジの初毛刈りは2021年の春に予定。お尻のほうの毛は敷物用に、きれいな毛からは、セーター2着分くらいの毛糸ができるそう。
4 できるだけエコ発送をする
イベント出店時や通販の商品発送に、以前はポリプロピレン袋を利用していましたが、使用後はごみになってしまうため、風呂敷と紙に切り替えました。
雨が降っても段ボールの中まで水が染み込むことはなく、いままで商品が汚れたことはありません。
「風呂敷を使うようになって、とても気が楽になりました。余り布を縫い合わせ、好きな色で染めることもあります」
〈撮影/佐藤美穂(ディスカバリー号) 取材・文/長谷川未緒〉
平野馨生里(ひらの・かおり)
2011年に石徹白に移住。2012年5月に石徹白洋品店を創業し服の製造販売などを行う。3児の母。
石徹白洋品店
岐阜県と福井県の県境に位置する石徹白で、地域に伝わる服の形を基にした服づくり・販売を行う。
岐阜県郡上市白鳥町石徹白65-18
☎0575-86-3808
営業時間:平日10:00~17:00
11月~4月は休業。詳細はwebサイトにて。
https://itoshiro.org/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです