• 岐阜の山奥で「石徹白(いとしろ)洋品店」を営む平野馨生里(かおり)さん。2011年に東京から岐阜へ移住し、子育てをしながら服づくりを行っています。身近な植物で布を染め、素材となるウールを知るために羊やヤギと暮らしている平野さんに、持続可能な暮らしのために実践していることを教えていただきました。
    (『天然生活』2021年3月号掲載)

    自然の豊かさを享受しながら、ものづくりを行う喜び

    岐阜の山奥で服づくりを行っている「石徹白(いとしろ)洋品店」の平野馨生里(かおり)さん。

    布を使い切るだけでなく、草木染め等、環境負荷の小さい服づくりを行い、評判を得ています。

    元々は東京で暮らしていたという平野さん。自然の豊かさを享受し、自分の手でものをつくり、喜びにつながっていくといういまの毎日こそが、持続可能な暮らしの実践だと感じているのだそう。

    そんな平野さんに、環境に配慮した暮らしの取り組みを教えてもらいました。

    * * *

    前回のお話はこちら▼

    平野さんの、4つの持続可能な取り組み

     むだなく布を裁断する

    画像: 左は石徹白洋品店のたつけで、ウエストゴムなど現代風にアレンジ。右は大麻の手つむぎ手織りでできた70年ほど前のたつけ

    左は石徹白洋品店のたつけで、ウエストゴムなど現代風にアレンジ。右は大麻の手つむぎ手織りでできた70年ほど前のたつけ

    平野さんが服づくりのベースにしているのは、石徹白に古くから伝わるたつけや越前シャツなどの民衣。これらはカーブのない直線断ちでつくられるため、布のむだがないデザインです。

    「一般的な洋服づくりでは、大量に出るはぎれがもったいなくて、すごくストレスでした。古くから伝わる日本の和裁の技術は、物を大切にする精神にあふれていると思います」

    画像: たつけの裁断図(ミニチュア)。着物1着分で約3着のたつけがつくれる

    たつけの裁断図(ミニチュア)。着物1着分で約3着のたつけがつくれる

     身の周りの植物で、布を染める

    画像: 除虫効果があり畑に植えているマリーゴールドは鮮やかな黄色に染まる

    除虫効果があり畑に植えているマリーゴールドは鮮やかな黄色に染まる

    桜、ヒメジオン、桑の葉、栗、枇杷の葉など、草木染めに使われる原料は、身近に採れるものがほとんど。

    「藍とマリーゴールド以外は、自生している植物を使っています。植物を採ってきては煮て、色が出たり出なかったりと、化学実験のように楽しんでいます」

    ごみの日に拾ってきた錆びた釘を酢につけ鉄媒染液をつくったり、薪ストーブの灰も媒染にしたりと、徹底して自然環境に配慮している。

    画像: 自生していない藍(左)とマリーゴールド(右)は種を採取。年々、育ちやすく

    自生していない藍(左)とマリーゴールド(右)は種を採取。年々、育ちやすく

    画像: 子どものように手をかけて育てた藍を使い、夏のあいだ藍染めを行う

    子どものように手をかけて育てた藍を使い、夏のあいだ藍染めを行う

     動物と暮らして、繊維を学ぶ

    画像: ヒツジのマルは、顔面と四肢のほかは長毛で覆われているコリデール種

    ヒツジのマルは、顔面と四肢のほかは長毛で覆われているコリデール種

    2019年からヤギと、2020年6月からはヒツジと暮らしている平野家。

    「ヤギは市内でも飼っている人が多く、家の周辺や畑に生える雑草を食べてもらっています。ヒツジからは、羊毛を取りウールという素材について学ばせてもらおうと思っています」

    ヒツジの初毛刈りは2021年の春に予定。お尻のほうの毛は敷物用に、きれいな毛からは、セーター2着分くらいの毛糸ができるそう。

    画像: 農家から譲り受けたヤギのアル。3人の息子さんとも、すっかり仲よし

    農家から譲り受けたヤギのアル。3人の息子さんとも、すっかり仲よし

     できるだけエコ発送をする

    画像: 桜と柿渋で染めた風呂敷。イベント時にごみが出ないことで、ストレス減に

    桜と柿渋で染めた風呂敷。イベント時にごみが出ないことで、ストレス減に

    イベント出店時や通販の商品発送に、以前はポリプロピレン袋を利用していましたが、使用後はごみになってしまうため、風呂敷と紙に切り替えました。

    雨が降っても段ボールの中まで水が染み込むことはなく、いままで商品が汚れたことはありません。

    「風呂敷を使うようになって、とても気が楽になりました。余り布を縫い合わせ、好きな色で染めることもあります」

    画像: 通販商品の包装は、紙で包んでから藍染めしたあまり糸をかけて

    通販商品の包装は、紙で包んでから藍染めしたあまり糸をかけて


    〈撮影/佐藤美穂(ディスカバリー号) 取材・文/長谷川未緒〉

    平野馨生里(ひらの・かおり)
    2011年に石徹白に移住。2012年5月に石徹白洋品店を創業し服の製造販売などを行う。3児の母。

    石徹白洋品店
    岐阜県と福井県の県境に位置する石徹白で、地域に伝わる服の形を基にした服づくり・販売を行う。

    岐阜県郡上市白鳥町石徹白65-18
    ☎0575-86-3808
    営業時間:平日10:00~17:00
    11月~4月は休業。詳細はwebサイトにて。
    https://itoshiro.org/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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