その1:介護サービスは、私のために使うもの
慌ただしく過ぎていく時間の中で、私は自分が置かれた状況を「介護」だとは、まだ気づかずにいました。
そんな生活が2、3年続いたある日、母がたまたま感染症で入院することになりました。すると、ひとりでお見舞いに通う私を見ていた病棟の看護師さんがそっと、院内の相談室へ行くよう勧めてくれたのです。
そこは、退院後の生活について看護師や社会福祉士の方が相談に乗ってくれる場所でした。私は質問されるまま、ふだんの暮らしについてお話ししました。
当時の状況は…
・着替えは手伝いが必要。
・洗面は自分でできる。
・お風呂は私が手伝っている。
・食事の用意は私がしている。
・洗濯は、干すまでは私、たたむのは母。
・家の中ではひとりで動けるが、ひとりでの外出は不安がある。
私の話に耳を傾けていた看護師さんは、私の目をまっすぐ見て、温かくもきっぱりといいました。
「介護サービスを利用しましょう」
「母のリハビリのためですか?」と聞き返す私に、看護師さんはこう続けたのです。
「それも大切だけれど、まずはあなたを支える環境をつくらなくちゃ。介護サービスはね、あなたのために使うものなのですよ」
えっ、私のために……?

院中に使っていたコップのふた。シリコン製でズレにくく、割れないので安心して使えました

小黒悠(おぐろ・ゆう)
1983年、東京都出身。服飾系専門学校を卒業後、貸衣装店勤務を経て、23歳で図書館に転職。その後20代〜30代に母親の在宅介護を経験。現在は会社員として働きながら、ケアや介護をテーマに「はるから書店」を個人で運営している。
はるから書店:
https://harukara-reading.stores.jp/
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