• 「ひとり旅にはあこがれるけれど、どうしたらいいかわからない」そんな方も多いのかもしれません。今回は、ふと旅に出たいと思い立ったときに役立つ地図への「マーキング」術を、旅のベテランの門賀美央子さんに教わりました。具体的な活用プランも紹介します。
    (『気ままに楽しく! 大人の女ひとり旅』より)

    “私専用行きたい場所リスト”の具体的な活用案

    前からちょっと気になっていた画家の特別展が、遠く離れた地方の美術館で開催されるそうだ。それほど展示機会が多い画家ではないから見逃したくない。だからといって、それのためだけに行くにはちょっと遠すぎる。これが「100年に1度しか開帳しない仏像でこの機会を逃したら2度とチャンスはない」なんていうレベルであれば即決するが、今回はもう少しなにか背中を押してくれるものがほしい。

    そこで、美術館の場所をGoogleマップで検索したところ、館の最寄り駅の駅前にマーキングしてあった。確認すると、どうやら以前読んだエッセイに「忘れられない味」として登場した和菓子店のようだ。マーキングしたこと自体はすっかり忘れていたけれども、メモ欄に書名を書き残してあったので、すぐ思い出すことができた。

    さあ、これで2ヶ所揃った。あと一押し、なにかあれば催行決定、である。

    そこで、地図を近隣駅まで少し広げてみたら、もうひとつマーキングが見つかった。以前テレビで見て素敵だなあと思っていた江戸時代の街並みが残る旧宿場町が隣町だったのだ。

    目的地が三つ、しかも「今しか見られないもの」と「いつか行こうと思っていたもの」の両方が揃った。ここまでくれば出かけることはほぼ決定だ。

    こうなったら次にやるのはその地方の名物/名産品の検索である。まず確認するのが自治体の公式観光サイトだ。

    すると、食はうどん、銘柄鶏、山菜やきのこが名物、江戸時代から盛んになった木工製品が名産だと書かれてあった。また、近頃はB級グルメとして地場産のしいたけを使ったバーガーを推しているそうだ。肉厚でジューシーなしいたけをフライにして、やはり地場産の小麦を原料にしたバンズで挟むらしい。タルタルソースは地元のご婦人方が作る漬け物を利用しているとか。これはこれでかなり魅力的である。

    この情報を元に、次は大手グルメサイトにアクセスし、保存リストに地域名や駅名を入れて検索してみた。過去に気になる店として保存しておいた情報がないか確認するためだ。

    すると、案の定あった。旧宿場町のほうにある鶏すき焼き店をチェックしていたのだ。さらに美術館の近くにしいたけフライバーガーを出すカフェも見つけた。

    これで方針は整ってきた。

    1日目は昼前に現地入り、しいたけフライバーガーを食べた後に美術館で特別展をゆっくりと観覧。宿は旧宿場町のほうに朝食付きプランで取っておいて、夕飯は鶏すき焼き店で取る。翌日は午前中に中心街から少し離れたところにある木地師記念館を見学、午後は町を散策しよう。

    アウトラインはこれで決定した。次は宿選びだが、宿を選ぶ時は国内大手の予約サイトをふたつほどとGoogleマップで地域のホテルを検索し、口コミ情報をチェックする。私が宿に求める条件は豪華さやホスピタリティではなく、清潔さと静かさだ。これがなければゆっくり休むことはできない。

    今回は鶏すき焼き店でちょっと贅沢をしたいので、宿はビジネスホテルにしておく。幸いなことに口コミが優秀な宿が見つかったので、そこの公式サイトから予約を入れた。最近は宿の公式サイトからの予約が一番安価であることが多い。けれども、必ずしもこの限りではないので、各予約サイトの値段を比較して慎重に選ぶ。節約できるところはグッと締めるのが私の主義だ。

    さて、最後は交通手段だ。今回、行きは経路案内サイトが提案する通りの最短ルートにするが、問題は帰りだ。2日目午後の予定がかなり余裕なので、場合によってはもうひとつぐらいどこか足を延ばせるかもしれない。

    そこで私はデスク上に常備してある昭文社の『全国鉄道旅行』地図を引っ張りだし、路線をチェックすることにした。この地図は鉄道路線を網羅するだけでなく、主な路線バスや高速バス、さらにはフェリーなどあらゆる交通手段が書き込まれている。デジタルマップは調べたい対象が明確な時は便利だが、一覧性に欠けるきらいがある。また経路案内サイトは効率性重視のルートしか出てこない。よって、寄り道するつもりでルートを探すならアナログの地図が勝る。

    今回も普通なら絶対に選ばない、でも乗り鉄的には最高のルートを見つけることができた。遠回りすればローカル私鉄に乗れるのだ。一般的なルートに比べると時間は倍以上かかるが、風光明媚で知られる海岸線を走る路線である。特に夕景がすばらしいと評判だ。帰路としてこれ以上ふさわしい路線はないだろう。

    さあ、すべてが決まった。あとは出発日まで土地の伝説や民俗を調べたり、ゆかりの文学作品などに目を通すだけだ。

    いかがでしょうか。

    私はだいたいいつもこんな感じでプランを立てています。実際にはここまでトントン拍子には進みませんが、骨組みさえできてしまえば、あとはああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら、肉づけしていきます。

    そして、この肉づけこそもっともおもしろい作業。私にとって旅の楽しみは半分がプランづくり、というのはそういうわけなのです。ぜひ試してみてください。

    本記事は『気ままに楽しく! 大人の女ひとり旅』(清流出版)からの抜粋です

    〈イラスト/イオクサツキ〉

    * * *

    『気ままに楽しく! 大人の女ひとり旅』(清流出版)|門賀美央子・著|amazon.co.jp

    『気ままに楽しく! 大人の女ひとり旅』(清流出版)|門賀美央子・著

    『気ままに楽しく! 大人の女ひとり旅』(清流出版)|門賀美央子|amazon.co.jp

    amazonで見る

    今を生きるための「ひとり旅」のコツが詰まったノウハウ・エッセイ集!

    「私だけの地図」を持ってみませんか? 自分のペースで歩く、今を生きるためのひとり旅。旅の注意点や計画づくりのコツが詰まったノウハウ・エッセイ集。ひとり旅初めての人も、ベテランの人にも楽しめて役に立つ! 自分だけの旅の計画のつくり方、テーマ例、旅先での食事、旅の七つ道具、安全対策など、ひとり旅のコツや、筆者自身の旅の思い出もぎゅっと詰まった1冊です。


    門賀美央子(もんが・みおこ)
    1971年、大阪府生まれ。フリーランス・ライター、文筆家。著書に『文豪の死に様』(誠文堂新光社)、『死に方がわからない』『老い方がわからない』『繋がり方がわからない』(以上、双葉社)、『この先の、稼ぎ方がわからない。─50歳から考えるお仕事図鑑』(清流出版)など多数。好きなものは旅と猫と酒。



    This article is a sponsored article by
    ''.