(『天然生活』2025年5月号掲載)
手をかけ心を込めて育てたパリの台所
じゃがいもの皮をむきながら、見える窓の外には、手ずから育てたジャスミンやアイビーがそよそよと。日が落ちてきたら、窓辺に吊るした燭台のキャンドルに火を灯して、チリチリと揺れる炎を楽しんで……。
なんともロマンチックな台所があるここはパリ。料理研究家の松長絵菜さんが、手塩にかけて築いた空間です。

ハーブはピッチャーに挿して台所に飾りながら使う。「寒い季節はベランダで育てているハーブ以外にマルシェでも大きな束を買って、たっぷり使っています」
パリに暮らして16年。この台所とは11年のおつきあいになりました。築100年なんていう建物がザラのパリでは、比較的新しい近代建築。入居の決め手は、やはりこの台所にあったそうです。
「古い建物が多いパリでは、火事のリスクを避けるためにIHが主流。私は料理が仕事なので、物件を探すときガスコンロが使える台所が希望のひとつでした。『火加減』ともいいますよね。レシピの細かなニュアンスを伝えるには、火で料理したかったんです」
そして出合ったのがこの住まい。IHが入っていた台所に、オーブン付きのガスコンロも導入しました。

キッチンの窓から見えるベランダではハーブやアイビーを育てる。天気のよい日にはここで本を読んだり、お茶を飲んだりしてリセット
4畳ほどの小さな台所ですが、DIYで壁にバーを取り付けたり、棚を加えたりしながら、収納を拡充。少しずつ自分仕様の台所にアップデートしてきました。松長さんによる、台所改造は何年も続き……。
「季節も暮らしも移り変わり、自分にとっての使い心地のよさは少しずつ変化しているのだと思います」
そのときどきの『使い心地』にぴったりくるように、台所に手を加えてきました。
「与えられた環境のなかでどうやったら気持ちよく過ごせるか? そのために工夫することが、とても好きなんです」
〈撮影/篠 あゆみ 取材・文/鈴木麻子〉
松長絵菜(まつなが・えな)
雑誌、書籍、広告を中心に料理研究家として活動。2009年からパリで暮らす。著書に『ひふみのおやつ』(文化出版局)など。パリの空気感を存分に感じられるユーチューブも好評。
YouTube@enamatsunaga
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



