(『天然生活』2025年5月号掲載)
「いまのベスト」に合うように。進化を続ける台所
「台所は小さな私の王国。いまある場所で、自分にとって気持ちのよい動線を考え、それにかなうようコツコツと整えてきました」
それはまるで「鳥が小枝を一本一本集めながら心地のよいカタチの巣をつくるように」と表現します。
お気に入りのガスオーブンを入れ、日常使いの食器を収納する棚の取り付けに始まり、10年以上経ったいまも、小さな工事は続いています。

窓辺にかけた古い燭台は、単なる飾りではなくキャンドルを灯す。ときにはふきんやスポンジを干すことも
たとえば一番最近は、和せいろ、中華せいろなどの蒸し道具をのせる棚を新設しました。子どもの成長に合わせて、彼が使いやすいように食器の収納場所も変化しているといいます。
古い住宅を自分たちで改良しながら、住みつないでいくパリでは、これは当たり前のこと。DIYショップも充実しているのだそう。
松長さんもときには木べらをトンカチに持ち替え、台所のミニ工事を繰り返してきました。重いものを運ぶときなどは、手伝いを頼むこともありますが、台所のDIYは松長さんが担当。
「『ここにこれがあったらいいな』という思いつきを、具現化してきました」
台所で一番気に入っているところは?という問いに、うーんと悩み顔。
「とくにひとつにはしぼれません。うれしい気持ちになる景色が、台所のどこに立ってもあるのです」

床の古いレンガは蜂の巣形でお気に入り。ダイニングに続く廊下には食器棚を置いて。「ここも台所の一部です」
〈撮影/篠 あゆみ 取材・文/鈴木麻子〉
松長絵菜(まつなが・えな)
雑誌、書籍、広告を中心に料理研究家として活動。2009年からパリで暮らす。著書に『ひふみのおやつ』(文化出版局)など。パリの空気感を存分に感じられるユーチューブも好評。
YouTube@enamatsunaga
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



