(『天然生活』2016年8月号掲載)
上の写真)
「海辺に生えている草は、ミネラルが多いといわれています。海水を含むので少し、しょっぱい」と、かわしまさん。自宅から車で5分の場所にある気持ちのいい海辺の小道で、この日、摘んだのは、ハマダイコンの花とハマグンバイヒルガオなど
草のある暮らし
ひと足早く夏を感じる、沖縄のある晴れた日。朝日が昇るころ、かわしまさんは、ぐんぐんと緑の小道を進んでいきました。
たどり着いた垣花樋川(かきのはなひーじゃー)は、静かに水の流れる音が響く、心地よい場所。深い緑に囲まれた林の中腹からは天然のわき水があふれ、木々や湿った土の香りが漂います。
「これはニシヨモギといって、フーチーバーとも呼ばれる沖縄在来の草。この小さくて丸い葉っぱは、チドメグサ。傷口に貼り付けると血が止まるといわれているの。ツボクサは、お茶にして飲むと、記憶力を高めてくれる。あ、シマキツネノボタンには、毒があるから気をつけて……」
小さな体を茂みに潜り込ませ、宝探しをするように草を摘みながら、かわしまさんの話は尽きません。
その様子はまるで、草博士。どの草花にも個性を見いだし、表情を汲み取るのは「草花が好きだから」だと笑いますが、その豊富な知識に驚かされます。
かわしまさんの隣を歩いていると、そこにあった無数の草花が、生き生きと、意味をもって存在しているようにみえてくるから不思議です。
かわしまさんが草に興味をもったのは、幼稚園のころから。
アスファルトの道沿いにひっそり咲く雑草に、ひかれていたといいます。
「雑草って、人々に『じゃまだな』と思われている草のことなんです。そのなかには、もともと美しいと評価されて海外から持ち込まれた外来種もあるのですが、繁殖力の強さが原因で、人に嫌われたり、飽きられてしまったり。だれにも見向きもされない草花のよさを、少しでも伝えたいのです」
※草を採取する場合は土地の所有者の許諾を受け、農薬などに注意してください。
〈撮影/大沼ショージ 取材・文/大野麻里〉
かわしまようこ
草花作家。自身を「雑草応援団長」と名づけ、草花のよさを広める活動をする。2000年から雑草にまつわる活動を開始。現在は、沖縄を拠点に教室やワークショップの開催、執筆活動などを行う。著書に『草と暮らす:こころと体を整える雑草レシピ』(誠文堂新光社)、『道ばたに咲く』がある。「天然生活web」にて「自然ごはん」を連載中。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです