(『天然生活』2016年8月号掲載)
上の写真)
「摘む場所で草の味が違うので、材料は目分量。春と秋、季節によっても味は変わります。いつも同じ味にならないほうが、自然なことでしょ?」と、かわしまさん
草を体に取り入れる
草花を口から体内に取り入れる、これも日々の暮らしで楽しんでいること。
草のサラダや天ぷら、雑草酵素ジュース。タンポポの根からつくるコーヒー、ドクダミでだしをとるスープ……。その自由な発想と実行力は、目を見張ることばかり。
意外なことに、草を食べはじめたのは数年前。しかも「すごく抵抗があった」そうで。
「だって、そのへんに生えている雑草を食べるなんて(笑)。当時は、体に草を取り入れることが自分に必要と感じて、食べたくないけど食べた、という感じです。きざんで玉子とじや、味噌汁に入れて、ごまかしつつ。勉強しながら試行錯誤するうちに、徐々に食べ方がわかってきました。苦手な葉の味でも、何種類も入れることで、がらりと味が変わる面白さがあります」
草を食べる目的は、満腹感を得るためではありません。
「エネルギーが体にスッと入る感覚」があるからだといいます。
「同じ草でも、人によっては甘いと感じる人がいれば、苦いと感じる人も。草が育った土地や、その人の体調によっても違うんです」
実際に、草料理をいただくと、 “エネルギー” の意味がわかります。
野菜とは違う、草本来がもつ、強い苦味や甘味。体の内側から元気がわき上がる感覚。
「これに慣れると市販の野菜は味がしない」という、かわしまさんの言葉にも納得です。
そして、なによりおいしい。
沖縄だからできることなのでは?と尋ねると、答えは「ノー」。
「実は、人の往来が多い都会のほうが、雑草の種類は豊富。草を見つめ、触れ、対話して、おいしい草さえ見極めれば、摘む場所は関係ない。どう取り入れるかは自分の感覚に委ねます。ただし、農薬がまかれていることがあるので、よく知っている安全な場所を選んで」
知れば知るほど深い、草の世界。
視点を変えれば、日陰の雑草が主役になることもある。
人に踏みつぶされても負けないその雑草の強さには、私たちの知らない魅力がまだまだ秘められているようです。
※草を採取する場合は土地の所有者の許諾を受け、農薬などに注意してください。
〈撮影/大沼ショージ 取材・文/大野麻里〉
かわしまようこ
草花作家。自身を「雑草応援団長」と名づけ、草花のよさを広める活動をする。2000年から雑草にまつわる活動を開始。現在は、沖縄を拠点に教室やワークショップの開催、執筆活動などを行う。著書に『草と暮らす:こころと体を整える雑草レシピ』(誠文堂新光社)、『道ばたに咲く』がある。「天然生活web」にて「自然ごはん」を連載中。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです