(『天然生活』2015年12月号掲載)
【休日の下ごしらえ】
↓
【平日の仕上げ】
休日に少し余分に手を動かせば、毎日のごはんづくりがぐっと楽に
毎日、手をかけたごはんを家族と味わいたい。
けれど、何かと忙しい平日に、それを一から始めるのは相当な労力。
そこでワタナベさんが習慣にしているのは、時間に余裕がある日曜日に、少し余分に手を動かして、平日分の下ごしらえを済ませておくことです。
「ポイントは、すべてをつくり込まないこと。ここで完璧に仕上げてしまうと、日曜日の仕込み自体が “仕事” となって、いつしか面倒になってしまいます。あくまで、 “ついで感覚” でできる範囲でいいんです。それに、いくら手づくりでも、完成したものをただ温めるだけでは不思議と味気ないものなんですよね。最終的な工程は、やっぱり、食べるその日にしたほうがずっとおいしく味わえます」
でき上がった “仕込みもの” は、アレンジが利くように薄味に仕上げています。
けれど、急いでいるときにはアレンジなしでそのまま、あるいはさっと火をとおすだけでおいしく食べられる味つけ。
さらに、和と洋の両パターンを取り混ぜてつくることで、飽きることなく、おいしく平日を乗り切れます。
やはり、メインのひと品が手軽にできるとわかっていれば、それだけで毎日のごはんづくりの負担はぐっと軽くなるもの。
忙しいときは、副菜まで仕込みものに頼ってもいいのです。
たとえば、時間があるときは、その場でつくるものを多めに。大急ぎのときは仕込んだものを中心にして、あとは汁ものだけをプラス。
自分の予定と相談しながら献立を自在に組めるのは、下ごしらえがあってこそ。
「気をつけるのは、火をとおしていない魚は、早めに食べるということ。とはいえ、お酢やワインでマリネしているので、週の前半までは、傷みを気にしなくても大丈夫。豚肉は生ですが、塩をしっかりしてありますから、週末まで安心してとっておけます」
日曜日に少しの時間を見つけて手を動かせば、月曜日からの5日間がぐっと楽になる下ごしらえ。
それぞれアレンジが利くので、献立のバリエーションは無数に広がっていきます。
短い時間で段取りよく整えられる、平日の晩ごはん。
ちょっと前の日曜日、せっせと手を動かしてくれた自分に、感謝でいっぱいになるはずです。
日曜日の下ごしらえ
A ごぼうのだし煮
材料(2人分×2)
● ごぼう | 1本 |
● だし | 700ml |
● 酒 | 大さじ1 |
● 塩 | 小さじ1/2 |
B じゃがいもとにんじんのスープの素
材料(2人分×2)
● じゃがいも(中) | 2個 |
● にんじん | 1本 |
● 玉ねぎ | 1個 |
● オリーブオイル | 小さじ2 |
● 白ワイン | 大さじ2 |
● 水 | 700ml |
C さばの黒酢しょうゆ漬け
材料(3人分)
● さば(三枚におろしたもの) | 1尾分 |
● 黒酢 | 50ml |
● しょうゆ、酒 | 各大さじ2 |
● ごま油 | 大さじ1 |
D さけのレモンマリネ
材料(4人分)
● 生ざけ(切り身) | 4切れ |
● 玉ねぎ | 1/2個 |
● レモン | 1個 |
☆白ワイン | 50ml |
☆塩 | 小さじ1 |
☆こしょう | 少々 |
E 豚肉の香草塩マリネ
材料(2人分)
● 豚ロースかたまり肉 | 300~400g |
● タイム、ローズマリー | 合わせて6~7枝 |
● 塩 | 小さじ1 |
F とりひき肉の梅味噌漬け
材料(4人分)
● とりひき肉 | 400g |
● 長ねぎ | 1/2本 |
● 梅干し | 3個 |
● 酒 | 大さじ2 |
● みりん | 大さじ1 |
● しょうゆ | 小さじ2 |
● サラダ油 | 小さじ1 |
G とりむね肉のしょうが酒蒸し煮
材料(2人分)
● とりむね肉 | 2枚(400g) |
● しょうが | 1片 |
● 酒 | 50ml |
● 塩 | 小さじ1 |
● 水 | 200ml |
下ごしらえの手順
0分 スタート
[調理のコツ] 野菜は最初にまとめてカット
1 A ごぼうは洗って泥を落とし、包丁の背で皮をこそげ取る。4cm長さに切り、太いものは縦に半分に切る。酢少々(分量外)を加えた水に5~10分さらして、あくを抜く。
2 B じゃがいも、にんじんは洗って皮をむき、玉ねぎも皮をむいて、それぞれ1cm角に切る。じゃがいもは水に5分ほどさらす。
3 D 玉ねぎは皮をむき繊維に沿って薄切りにする。レモンは半分に切り、片方は輪切りにし、片方はしぼる。
4 F 長ねぎ(白い部分)を、みじん切りにする。
5 G しょうがは皮をむいて薄切りにする。
6 B 2の水けをきる。
↓ 10分 ↓
[調理のコツ] まずは煮ものを
7 A 1をざるにあげる。
8 E タイム、ローズマリーを粗みじん切りにする。
9 F 梅干しは種を取り除いて細かくきざみ、酒、みりん、しょうゆと合わせておく。
10 B 鍋にオリーブオイルを熱し、玉ねぎ、にんじん、水けをきったじゃがいもを加えて、油がまわる程度に炒めたら、水を入れる。煮立ったら白ワインを加え、ふたをし、弱火で約10分煮る。
↓ 20分 ↓
11 A 7、だし、酒、塩を鍋に入れて中火にかけ、煮立ったら弱火にして約15分煮る。
[調理のコツ] 魚は切り身を上手に活用
12 C さばは各3等分にして保存容器に入れ、黒酢、しょうゆ、酒、ごま油を加えて上下を返しながらなじませる。そのまま冷蔵庫で保存する。
13 D さけの切り身と3の玉ねぎ、レモンの輪切り4枚、レモン汁大さじ1を保存容器に入れ、☆を合わせたものでマリネする。そのまま冷蔵庫で保存する。
↓ 30分 ↓
14 G とりむね肉は、厚みがある部分は浅く切り目を入れてひらき、厚みを均一にする。
まず中心に切り込みを入れ、そぐように観音開きにする
[調理のコツ] 肉の調理は終わりのほうに
15 E 豚ロースかたまり肉に8のハーブと塩をもみ込む。保存容器に移し、冷蔵庫で保存する。
↓ 40分 ↓
[調理のコツ] 洗いものはまとめて
洗いもの 包丁、まな板、バット、ボウル、ざるなど
16 B 10の粗熱が取れたら保存容器に移し、冷蔵庫で保存。
17 A 11の粗熱が取れたら保存容器に移し、冷蔵庫で保存。
洗いもの 鍋
↓ 50分 ↓
18 G 洗った鍋に、5と14、酒、塩、水を入れて中火にかけ、煮立ったらふたをして弱火で約8分蒸し煮する。火を止め、そのまま冷ます。
19 F フライパンに油を熱し、4とひき肉を炒める。9を加え、汁けがなくなるまで炒める。
20 G 18の粗熱が取れたら、汁ごと保存容器に移し、冷蔵庫で保存する。
21 F 19の粗熱が取れたら保存容器に移し、冷蔵庫で保存。
60分 終了
洗いもの 鍋、フライパン、木べら、菜箸など
段取りをよくするための調理のコツ
野菜は最初にまとめてカット
効率よく作業を進めるためには、同じ作業は一気に済ませてしまうことが重要。
つい、料理ごとに仕上げたくなってしまうけれど、そこは発想を変えて。
まな板や包丁を使うときは、まずは野菜を、次に、においのある魚や脂分を含む肉の順番で切ると、洗う手間も省ける。
また、まな板は大きめのものを使うと、ねぎ類など、においの強いものとその他の野菜をエリア分けして切ることが可能。
さらに、まな板を一回一回、洗わなくてもすむよう、ぬらしたキッチンペーパーを用意して、汚れたらさっとふき取るのも便利なアイデア。
まずは煮ものを
理想は、幾つも並行して進めていた作業がタイムラグなく同時に終わること。
そこで、時間のかかる煮ものは初めのうちに。
煮ている間は手をかける必要がないので、ほかの作業ができる。
ただし、火がとおりすぎることがないようタイマーをかけておくのを忘れずに。
魚は切り身を上手に活用
下ごしらえも手軽なほうがいい。
切り身を使えば、内臓の処理などもないため、まな板の汚れも少なく洗いものも楽になる。
切り身は骨が少ないから、食べやすいのも長所。
肉の調理は終わりのほうに
肉は室温にもどし、少しやわらかくなってからのほうが塩やハーブをもみ込みやすくなり、さらに味もなじみやすくなる。
洗いものはまとめて
“洗う→ふく” の作業は、調理の流れを中断してしまうので、なるべくまとめる。
中盤に1回、最後に1回程度に収めて。
食材リスト
※分量は2人分(日曜日の下ごしらえと、月~金曜日の献立に使用する量)です。
野菜、ハーブ類
白菜......葉3枚分(約300g)
キャベツ......葉4枚分(約300g)
もやし......1/2袋
ターツァイ......150g
ほうれんそう......1/3束(約100g)
ブロッコリー......5房(1/2株)
パプリカ......3/4個
長ねぎ......2本
細ねぎ......5本
玉ねぎ......2個
にんじん......1本
じゃがいも(中)......2個
さつまいも(小)......1本(200g)
ごぼう......1本
れんこん......200g
エリンギ......2本
しめじ......50g
まいたけ......50g
にんにく......1片
しょうが......1片
タイム、ローズマリー......合わせて6~7枝
イタリアンパセリ(またはパセリ)......4枝
レモン......1個
すだち(あれば)......1/2個
魚、肉、卵
生ざけ(切り身)......4切れ
さば(三枚におろしたもの)......1尾分
しじみ......150g
豚ロースかたまり肉......300~400g
とりむね肉......2枚(400g)
とりひき肉......400g
卵......1個
その他
絹ごし豆腐......1/3丁
油揚げ......1/2枚
梅干し......3個
牛乳......100ml
パルミジャーノチーズ(または粉 チーズ)......大さじ1/2
パン粉......大さじ2
調味料
塩、こしょう、酢、黒酢、白ワインビネガー(または酢)、バルサミコ酢、しょうゆ、味噌、酒、紹興酒(または酒)、白ワイン、みりん、サラダ油、ごま油、オリーブオイル、白炒りごま、白すりごま、白練りごま、カレー粉、粉山椒、片栗粉
〈料理・スタイリング/ワタナベマキ 撮影/福尾美雪 取材・文/福山雅美〉
わたなべ・まき
簡単なのに、美しくキレのよい料理を提案。1年に10冊のペースでレシピ本を出版する。近著は『料理家ワタナベマキが家族のために作るごはん』(主婦と生活社)。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです