日本で最も親しまれているヨモギとは?
こんにちは。山下智道です。
この世界にヨモギは何種類くらいあると思いますか?
実はヨモギの仲間は世界に約500種、日本では約40~45種近くあるといわれています。
そのなかでも、草餅づくりやよもぎ蒸しなどに使われる、日本人の暮らしにもっとも身近なヨモギは『カズザキヨモギ』と呼ばれる種で、道ばたや河川敷、野山などでよく見かけるヨモギです。
薬用としてヨモギを使う場合は、この「カズザキヨモギ」と、北海道や東北に生育する「オオヨモギ」、沖縄に生育する「ニシヨモギ」の葉と枝先を使うのが一般的です。
5月~7月のヨモギはパワーがいっぱい
ヨモギを採取するベストシーズンは、5月から夏の間です。
よく間違われやすいのが、春先に見られる、シルバーグリーンの若いヨモギの葉。
これは草餅のつなぎや香りづけなどに使われますが、薬用としてヨモギを使う場合は5~7月あたりに摘むのがよいとされています。
採取する時期によって香りや印象が異なるのは成分によるもので、ヨモギは生長するにしたがって青臭さがなくなり、ヨモギ特有のさわやかな香りが次第に強くなります。
草餅もこの時季のヨモギを使うのがおすすめ
ヨモギ餅をつくるにも5~7月ごろの葉を使うのがおすすめです。
数秒湯がいたヨモギの葉を冷水に漬け、水気を軽く切り、ペースト状にして、白玉粉に加え混ぜます。
あんこと一緒にいただくのが定番ですが、黒蜜と合わせたり、味噌汁に入れてもおいしいです。
草餅をつくるときは、すり鉢でヨモギをペースト状にするのがおすすめ。細胞がすりつぶされ、ヨモギの香りがよく立ちます。
ヨモギの使い方や効能について
採取したヨモギは、日干しをして乾燥させることで生薬「ガイヨウ」になります。
ヨモギには、収斂(しゅうれん)、止血、抗炎症、鎮痛、抗菌、血行促進などの作用があり、月経過多、生理痛、生理不順、神経痛、冷え性、風邪などにも効果があるといわれています。
煎じてお茶にしたり、オイルやアルコールに成分を移せば、食用のほか、マッサージオイルや入浴剤などスキンケアにも使うことができます。
次回はヨモギを使って料理をしたり、オイルや入浴剤をつくったりして楽しむ方法をご紹介します。どうぞお楽しみに!
Japanese mugwort
カズザキヨモギ(数咲き蓬) について
分類:キク科ヨモギ属
別名:ヨモギ(蓬)、モチグサ(餅草)、モグサ(艾)
学名:Artemisia princeps Pampan.
野山などでよく見かけ、日本人の暮らしに最も親しみがあるヨモギ。
頭花をたくさんつけることから、「カズザキヨモギ」という名前が付けられています。
本州から九州、沖縄、小笠原、朝鮮半島に分布する多年草で、草丈は50~120cmほどになります。
山下智道(やました・ともみち)
野草研究家。福岡県北九州市出身。登山家の父のもと幼少より大自然と植物に親しみ、野草に関する広範で的確な知識と独創性あふれる実践力で高い評価と知名度を得ている。国内外で多数の植物観察会・ワークショップ・講座を開催。
著書に『ヨモギハンドブック』(文一総合出版) amazonで見る 、『野草がハーブやスパイスに変わるとき』(山と渓谷社) amazonで見る 、『野草と暮らす365日』(山と渓谷社)amazonで見る など多数。
●公式サイト「野草研究家 山下智道」
https://www.tomomichiyamashita.com/
●YouTube:「山下智道のなんでも植物学」
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●Instagram:@tomomichi0911
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野草研究家「ハーブ王子」こと山下智道が、ヨモギ愛を注いだ図鑑 国内で見られるおもなヨモギ44 種類を掲載。一見似ている種類が多いヨモギ類を、葉と頭花の特徴で見分けられるように編集。識別だけでなくその種の個性、いわば「草となり」を、著者が実際に観察した経験から紹介。 食用や薬用、神事や魔術など、ヨモギと人の暮らしとのさまざまな関わりについても、豊富な情報を盛り込んだ。