• 梅雨どきに花を咲かせるドクダミ。独特の香りがあり、繫殖力が高いことから、やっかいな雑草と思われがちですが、実はさまざまな薬効があり、暮らしのなかで役立てることができます。そんなドクダミについて、野草研究家の山下智道さんにお話を伺いました。

    日本を代表する野草であり、ハーブでもある「ドクダミ」

    画像: 日本を代表する野草であり、ハーブでもある「ドクダミ」

    こんにちは。山下智道です。

    日本を代表する野草であり、ハーブでもある「ドクダミ」。

    皆さんはドクダミというと、どんなイメージを連想するでしょうか?

    やはりあの特有な香りでしょうか、それともやっかいな雑草でしょうか。

    今回はそんな、私たちの身近に生育する「ドクダミ」を紹介してみたいと思います。

    独特の強い香りを持つ一方で、いやなにおいを消してくれる効果も

    画像: 独特の強い香りを持つ一方で、いやなにおいを消してくれる効果も

    街なかや道ばたなどでもよく見かけるドクダミは、湿り気のある半日陰の場所を好みます。

    繁殖力が強く、放っておくと、一面ドクダミだらけになり、他の植物が生えなくなってしまうことも。

    独特の強いにおいがあることと、地下の茎を伸ばして生い茂るため、除草しづらく、やっかいな雑草としても知られています。

    独特の香りが特徴のドクダミですが、実は消臭効果もあり、摘んだドクダミの葉を玄関やトイレなどにおいておけば、梅雨どきのいやなにおいを消してくれます。

    ドクダミの効果や使い方について

    画像: ドクダミの効果や使い方について

    ドクダミは、さまざまな作用や薬効が期待できることから、10種の薬にも相当するということで、古来から「十薬(じゅうやく)」と呼ばれてきました。

    生薬としても知られていて、「五物解毒散(ごもつげどくさん)」と「栝楼薤白湯(かろうがいはくとう)」という2種類の漢方に配合されています。

    ドクダミには、殺菌作用や解毒作用があり、食中毒や傷口の化膿などをふせぐほか、利尿効果や毛細血管の強化作用があり、新陳代謝を促すはたらきもあります。

    また、皮膚の炎症をケアする作用もあり、ニキビや肌荒れ、日焼けで火照った肌を鎮静化してくれます。

    ドクダミの楽しみ方

    ドクダミの生葉には独特の強い香りがありますが、乾燥させると香りが少なくなります。

    葉を乾燥させたドクダミ茶は、ほうじ茶のような感覚で飲むことができます。

    また、「リモネン」という柑橘系に含まれる芳香成分が入っているので、シロップにすると、オレンジの皮やマーマレードのような味わいに。

    画像1: ドクダミの楽しみ方

    根の部分は、薬味のように使うのがおすすめ。エスニック料理でよく使われるハーブ「コブミカン」や「コリアンダー」と同じように、料理にさわやかな風味を添えてくれます。

    スキンケアに使うのもおすすめで、ドクダミにアルコールを浸してチンキをつくったり、オイルに浸して浸出油(インフューズドオイル)をつくると、虫刺されやニキビ、日焼けした肌のケアに役立ちます。

    画像2: ドクダミの楽しみ方

    次回からは、ドクダミを使って料理をしたり、チンキやオイルをつくったりして楽しむ方法をご紹介します。どうぞお楽しみに!

    ドクダミ について

    分類:ドクダミ科ドクダミ属
    学名:Houttuynia cordata.
    多年草

    日蔭などの湿地を好むドクダミ。

    北海道南部から本州、四国、九州、小笠原諸島まで幅広く生育しています。

    ハート型の葉を持つことから、ラテン語で「心臓の形」を意味する「cordata(コルダータ)」という学名が付けられています。

    4枚の白い花びらのように見えるのは、実は花ではなく、苞(ほう)と呼ばれる葉のようなもの。花は中央に伸びる黄色の部分で、6~7月ごろ小さな花がたくさん集まって咲きます。

    画像: 左)黄色い部分がドクダミの花。小さな花がたくさん集まって咲いている。右)花のように見えるが実は葉のような存在の苞(ほう)。

    左)黄色い部分がドクダミの花。小さな花がたくさん集まって咲いている。右)花のように見えるが実は葉のような存在の苞(ほう)。

    ***

    ドクダミの由来

    毒に効果があるという意味で、「毒矯み(どくだみ)」=「毒を抑える」が名前の由来。また生のドクダミには特有のにおいがあるので、毒でも入っているのではないかと「毒溜め」の名から変化したのが由来ともいわれています。

    江戸時代以前は、ドクダミは「之布岐(しぶき)」と呼ばれていました。これは「滞る(とどこおる)」という意味の古語「渋く(しぶく)」にちなみ、湿った窪地に群生して、毒気(悪臭)が立ち込めることから「毒渋き(どくしぶき)」といわれ、それが短くなって「しぶき」となった説があります。昔からドクダミのにおいには、皆悩まされていたようですね。



    画像: ドクダミ について

    山下智道(やました・ともみち)
    野草研究家。福岡県北九州市出身。登山家の父のもと幼少より大自然と植物に親しみ、野草に関する広範で的確な知識と独創性あふれる実践力で高い評価と知名度を得ている。国内外で多数の植物観察会・ワークショップ・講座を開催。

    著書に『ヨモギハンドブック』(文一総合出版) amazonで見る 、『野草がハーブやスパイスに変わるとき』(山と渓谷社) amazonで見る 、『野草と暮らす365日』(山と渓谷社)amazonで見る など多数。

    7/19に新刊『旅で出会った世界のスパイス・ハーブ図鑑 東・東南アジア編』 amazonで見る が発売予定。

    ●公式サイト「野草研究家 山下智道」
    https://www.tomomichiyamashita.com/
    ●YouTube:「山下智道のなんでも植物学」
    https://www.youtube.com/@tomomichi_yamashita
    ●Instagram:@tomomichi0911
    https://www.instagram.com/tomomichi0911/
    ●X(旧Twitter):@herbtomo0901
    https://twitter.com/herbtomo0901

    ◇ ◇ ◇

    『旅で出会った世界のスパイス・ハーブ図鑑 東・東南アジア編』(創元社・刊)

    画像2: 「ドクダミ」のお話。日本を代表する、身近で“有能な”ハーブ/野草研究家・山下智道のハーブ&スパイス紀行

    amazonで見る

    野草研究家・山下智道がアジア各地を旅して出会った風変わりでエキサイティングな植物たちを写真で案内する、新感覚のスパイス・ハーブ図鑑。

    ネパール、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、台湾、韓国の7つの国で親しまれている香辛料、香草、薬草、野菜、果物、藻類などを、現地での様々な用途や日本で見られる近縁種とともに150種以上紹介。

    植物を使った料理や製品、旅情あふれるマーケットや野山の風景も満載。



    This article is a sponsored article by
    ''.