Q:乗り物酔いが激しくて、旅行も楽しめません。原因と対策はありますか?

毎回なので、一緒に出かける友人にも申し訳なくなっちゃいます……
乗り物酔いが激しく、車や飛行機に乗るときに頭が痛くなったり時には吐いてしまったりすることもあり、いつも大変です。なにか原因があるのでしょうか?
せっかくの楽しい旅行も移動がつらいと気持ちが重くなり、同乗者にも気を使わせてしまうので、予防策やおすすめの生活習慣があれば教えていただきたいです。
ちなみに酔い止め薬が欠かせないのですが、そのほかにもガムや梅干しを持ち込むなど、準備にも苦労しています。
(キョンさん 40代/会社員)
A:自律神経やホルモンバランスの乱れも原因のひとつ。普段からできる予防策もあります

50代以降はラクになると思いますよ。まずはメカニズムをお伝えしましょう
「乗り物酔い」が起こる原因とメカニズム
今回はキョンさんからの乗り物酔いのご相談です。乗り物酔いは動揺病とも呼ばれます。
まず最初にみなさんが、どのように平衡感覚を保っているかというと、目から入ってくる情報、耳の中の平衡感覚を司どる三半規管からの情報、深部知覚といって、筋肉や関節に伝わる揺れや振動の情報を、脳で処理してフラフラしたり倒れないように姿勢を制御しています。
車やバス、電車、船などに乗り、乗り物の揺れや不規則な加速・減速などの反復する刺激が耳や筋肉から脳に伝わってくるのですが、目からの情報は乗り物に乗っている場合には止まっているように見えるため、脳が混乱を起こし、自律神経が乱れ、吐き気、嘔吐、めまい、頭痛などを引き起こしてしまいます。
このため乗り物に乗っている時には読書をしたり、スマホを見たりして一点を凝視していると酔いやすくなります。
乗り物酔いは若年層、女性が発症しやすい傾向が
また乗り物酔いは不安感などの精神的な要因やホルモンバランス、匂いの刺激によっても誘発されることが知られており、男性よりも女性の方が発症しやすいとされていて、12〜15歳では約4割が乗り物酔いを経験するといわれています。
ただ、一方で年齢を重ねると徐々に症状が改善していくのが特徴で50歳以上になると発症の頻度が減るといわれています。
乗り物酔いの予防策・治し方
予防としては、乗り物に乗るときには読書やスマホ操作など視界が静止する動作は避けて遠くを見つめたり、目を閉じておくのもよいでしょう。
寝不足や満腹、空腹を避け、適度な換気で新鮮な空気を吸う、楽な姿勢でベルトを緩めたり、ボタンを外したりして服の締め付けをゆるめましょう。
おしゃべりをしたり、ストレッチをしたりして緊張を緩めたりすることも発症予防につながります。
宇宙飛行士と一緒? 普段からの運動で防ぐことも
また普段から、適度な運動やラジオ体操などで、動きに慣れておくこともよいと思います。
たとえば体操選手や宇宙飛行士さんがくるくる回っても乗り物酔いしないのは、普段から練習でその動きに慣れているためだからです。
最近は違うと思いますが、初期の宇宙飛行士さんは宇宙酔いを防ぐため、回転椅子に座り、クルクル回される訓練をしたと聞いたことがあります。
またキョンさんがやっているようにガムを噛んだり、飴をなめたりするのも効果的で、ミント味など口の中がさっぱりするものがよいでしょう。
胃の不快感を軽減する作用がある生姜紅茶やペパーミントティーなどもおすすめです。梅干しもよいと思います。
また乗り物酔いを予防するツボとして、手首にある内関(ないかん)や外関(がいかん)などのツボを押したり、ここに皮内針などの針を貼っておくのもよいかもしれませんね。
※内関は、手のひらを上に向けた状態で、手首の内側にできるしわから指3本分ひじ側に離れた場所。外関は、手のひらを下に向けた状態で、手首の中央にできるしわからひじ側に指3本分離れた場所にあるツボです。
乗り物酔いにおすすめの漢方
漢方薬では乗り物酔いに五苓散(ごれいさん)という気圧の変動を和らげ、気持ち悪さを軽減する漢方薬もおすすめです。二日酔いにも効果があるのですが、修学旅行や帰省する時にお出しするととても効果があり、喜ばれる処方です。
それでも難しい場合には抗ヒスタミン薬や抗コリン薬などのお薬で脳の興奮や自律神経の興奮を抑えることで乗り物酔いの症状を緩和することができますね。
今回の記事がキョンさん始め、乗り物酔いにお悩みの皆様の少しでもお役に立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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