実験結果/考察
「水苔植え」の収量は、「普通植え」の約4割増し!
水苔植え

個数 :約120個
重量 :約11kg
「普通植え」より、重量・個数ともに約4割もアップした。夏ばてすることもなく、生育期間中コンスタントに収穫できた。水苔の効果で、真夏の乾燥時も水切れせず、肥料吸収もスムーズに行えたと推測できる。


1本1本の根が太く、広範囲に広がっている。とくに横方向に伸びる上根が発達している。水苔で十分な水分を得られるいっぽう、養分や酸素はとり入れにくいため、それを求めて早い段階から根が広がったものと考えられる
普通植え

個数 :約85個
重量 :約8.1kg
「普通植え」としてはかなりの収量といえる。そもそも1株から50個も収穫できれば上できと考えてよい。ただ水苔植えに比べて真夏と10月下旬以降の収穫量が伸びなかった。


「水苔植え」と比べると根が細い。掘り上げのさいに根が切れるので断言できないが、根の量も少なく、縦方向の根が発達している。生育初期から水分を求めて下に根が伸びた、と推測される。茎も株元で比較すると明らかに細い
実験の結果は上の表のとおり。
「水苔植え」はA・Bともに目標の100個を超え、2株平均で120個、約11kgという期待以上の結果となりました。
「普通植え」Cも98個(約10kg)と家庭菜園としては十分な収量でしたが、水苔植えには劣ります。

平均でみると、「水苔植え」の収量は、「普通植え」の約4割増しと大きな差がつきました。「水苔植え」が優れた方法なのは、収穫終了後に掘り起こした根を観察してみて確信に変わりました。
一見して「普通植え」に比べて、「水苔植え」のほうが、明らかに根量が多いことがわかります。また、地表から5~10cmの深さを横に広がる“上根”が発達していました。上根は地表近くに伸びる根で、水苔効果に加えて穴底植えの保湿効果により生育が促進したものと思われます。
その後、生育中期になると、ナスは80~100cmの深さに直根を伸ばします。その時点になると根鉢のまわりを覆った水苔は根の一部を包むにとどまります。
つまり、水苔でしっかりと保水しながら、その範囲を突き抜けた根は土中の酸素を十分にとり入れられるのです。
水苔の保水力と根の発達は、生育後半にも草勢を維持し、1株平均120個という多収量を実現する原動力となりました。
本記事は、『家庭菜園の超裏ワザ』(家の光協会)からの抜粋です。
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<撮影/阪口克>
和田義弥(わだ・よしひろ)
1973年茨城県生まれ。フリーライター。20〜30代前半にオートバイで世界一周。40代を前にそれまで暮らしていた都心郊外の住宅街から、茨城県筑波山麓の農村に移住。昭和初期建築の古民家をDIYでセルフリノベーションした後、丸太や古材を使って新たな住まいをセルフビルド。約5反の田畑で自給用の米や野菜を栽培し、ヤギやニワトリを飼い、冬の暖房を100%薪ストーブでまかなう自給自足的アウトドアライフを実践する。著書は『増補改訂版 ニワトリと暮らす』(グラフィック社)、『一坪ミニ菜園入門』(山と渓谷社)など多数。