(『天然生活』2023年5月号掲載)
ハーブの存在そのものが、理屈抜きで大好き
フランス語で、「Fines herbes (フィヌ ゼルブ)」や「Plantes aromatiques (プラント アロマティック)」と呼ばれるハーブは、フランス人にとってごく身近な存在。
マルシェや園芸店はもちろん、小さなスーパーでも必ず数種類は見つかります。

行きつけのマルシェで買ってきたツヤツヤで色鮮やかな野菜や果物、卵、はちみつ、ワイン、そしてハーブたち
イザベルさんは、近くに住む父が自宅の庭で無農薬で育てているハーブをふだんよく使っているのだそう。
「父のハーブはとっても新鮮。遊びに行くたびに、庭で採れた野菜やお花と一緒にかごバッグに入れて持ち帰るのが何よりの楽しみ。
電車に乗ったとたんいい香りがふわっと広がるので、私は「Panier de joie(幸せのパニエ)」と呼んでいて、家に着いたらすぐさま料理に取りかかりたくなります」

庭で摘んだばかりのフレッシュなハーブやお花、採れたての野菜を、愛用するパニエに入れて持ち帰るのがいつもの楽しみ
ハーブを好きな理由を尋ねると、「J’adore !(大好き)とにかく大好きなんです」というイザベルさん。
「こんなに小さな葉っぱが濃厚な香りを秘めていることにも驚かされるし、その存在にもひかれます。また、体によい効能をたくさんもち合わせているのも好きな理由のひとつです」

バカンス先のモンペリエのマルシェで見かけたハーブの鉢植え。土地ごとに特色のあるハーブが見つかるので、旅先でもついつい気になってハーブを見てしまう
イザベル流、ハーブの楽しみ方
春夏秋冬、いろいろなハーブを楽しむイザベルさんですが、バジル、ミント、パセリ、コリアンダー、タイム、ローズマリーの6つはとくにお気に入り。定番として常備しています。
冬場でもすぐ使えるよう、きざんで冷凍したり、キッチンクロスの上に広げて乾燥させたり、ブーケのように束ねたりして保管しています。

キッチンテーブルは新鮮なハーブや野菜でいつもにぎやか。目玉焼きにグリーンサラダ、赤ワインの組み合わせは夏によく食べるメニュー
「バジルが大量にあるときは、パルメザンチーズとにんにく、両親の庭で採れるくるみを加えて、オリーブオイルと一緒にミキサーにかけてピストゥをつくります」
ちょっとしたグラスや花器にハーブの束を挿して、花やグリーンの隣に飾るのも好き。
「眺めているだけで幸せな気持ちになれるし、なによりも丸ごと食べてしまえるのだから、ある意味、お花よりも多くの楽しみ方ができるでしょう?」
型にはまらず、自然体でハーブを愛でるイザベルさんにたくさんのヒントをもらいました。

部屋の中にはグリーンがいっぱい。観葉植物と一緒にハーブも飾るのがイザベルの定番スタイル
次回は、イザベルさんの「ハーブが主役の食卓」をご紹介します。どうぞお楽しみに!
〈撮影・イラスト/イザベル・ボワノ 取材・文/トリコロル・パリ(荻野雅代、桜井道子) 構成/鈴木麻子〉

イザベル・ボワノ(いざべる・ぼわの)
フランス・アングレーム在住のイラストレーター。雑誌の連載や本の執筆、雑貨のイラストなど幅広く活躍中。著書にNHK Eテレの人気番組を書籍化した『パリジェンヌの田舎暮らし』(パイ インターナショナル)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです