• 2023年6月、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されたまさこさん。少しずつ体が動かなくなっていく進行性の病気とともに生きながら、家族との一日一日を大切に過ごしています。このエッセイでは、まさこさんの日々の暮らしや思い、そして、喫茶店の店主として、母として、数々の料理をつくり続けてきたまさこさんの“未来に届けたいレシピ”などをつづっていきます。今回は、「ALSと診断されてからのお話」です。

    葛藤の先に見つけた、わたしの願い

    そうして少しずつ心のバランスをとれるようになっていくと、「これから、どんなふうに生きていきたいのか」を考えるようになりました。

    病気のことだけでなく、ひとりの女性として、ひとりの母として。

    やりたいことを、行きたい場所、挑戦したいこと──

    「もうできない」と思い込むのではなく、「どうやったらできるか」を考えてみよう。

    そう心に決めたのです。

    画像: 葛藤の先に見つけた、わたしの願い

    けれどその一方で、手足が思うように動かなくなり、母として「あたりまえのこと」ができない現実に、悔しさや無力感も抱えていました。

    このままでは将来、子どもたちのなかで母との時間は悲しいものだったと記憶されてしまうのではないか。

    そんな不安が、ふとした瞬間に胸をよぎりました。

    そうならないよう、いまのわたしにできることはなんだろう。

    子どもたちに、温かななにかを残せないだろうか──

    そう考えてたどりついたのが、「母の味を残すこと」でした。

    わたしがこれまで大切にしてきた記憶であり、私たち家族をつないできた時間そのもの。

    そして何より、いまのわたしだからこそできる、かけがえのない贈りものだと思えたのです。

    愛と希望が伝わるレシピを

    これから少しずつ、営んでいる喫茶店で人気だったメニューや、わが家の定番料理をご紹介していこうと思っています。

    それぞれの料理に込めた思いや、家族とのエピソードも添えながら。

    そしていつか、子どもたちが大人になってもふと手に取りたくなるような、そんな一冊のレシピ本を残せたら──

    それが、今のわたしのささやかで大きな目標です。

    画像: 愛と希望が伝わるレシピを

    〈撮影/いわいあや 協力/田中 文(キッチンパラダイス)〉

    まさこ
    1981年、喫茶モーニングの街・愛知県豊橋市に生まれる。カフェオーナーだった賢介さんと結婚し、家族で日本と海外を行き来する生活を送った後、2018年に福岡でカフェ「サウンズフード サウンズグッド」をオープン。2021年、長女・琳さんを出産後、足から違和感を感じるようになり、2023年にALSの診断を受ける。失意の底に突き落とされるが、自然治癒の症例もあると知り、その可能性に希望を見いだして生きることを決意。現在は「#何処かで誰かの希望となりますように」を合言葉に、これまで考案してきたレシピを記録に残す活動を開始している。
    インスタグラム:@sfsg_masako



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