救われたひと言
数年前、苦しみの底から自分を取り戻せたのは、誰もが一度は耳にしたことのある、たったひとつの言葉がきっかけでした。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病名がつく前、私は毎日が不安でいっぱいでした。
原因もわからないまま症状はどんどん進行します。眠れぬ夜が続きました。
「もしこの予想が現実になったら――」
恐怖と絶望で身体はさらにこわばり、息をするのも苦しかったです。
ある日、心も体も限界で、ついに子どもたちの前で泣き崩れてしまいました。
「ごめんね……ごめん。ママ、ALSかもしれないの……」
すると、すでに病気のことを知っていた息子が、私をまっすぐ見ていったのです。
「ママ、大丈夫だよ。ママなら大丈夫!」
その瞬間、張りつめていた糸がふっとほどけました。
「……そうだね。そうだね。だんだん大丈夫な気がしてきた」
涙が止まり、部屋の空気もやわらかく変わったように感じた、忘れられないひとときでした。

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▼「難病ALSとともに生きる」第1話からはこちら
〈撮影/いわいあや 協力/田中 文(キッチンパラダイス)〉
まさこ
1981年、喫茶モーニングの街・愛知県豊橋市に生まれる。カフェオーナーだった賢介さんと結婚し、家族で日本と海外を行き来する生活を送った後、2018年に福岡でカフェ「サウンズフード サウンズグッド」をオープン。2021年、長女・琳さんを出産後、足から違和感を感じるようになり、2023年にALSの診断を受ける。失意の底に突き落とされるが、自然治癒の症例もあると知り、その可能性に希望を見いだして生きることを決意。現在は「#何処かで誰かの希望となりますように」を合言葉に、これまで考案してきたレシピを記録に残す活動を開始している。
インスタグラム:@sfsg_masako
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▼『天然生活』2025年6月号掲載のまさこさんの記事を公開中です。ぜひ合わせてお読みいただけましたら幸いです。