まさこさんとの出会い、そして届いた予期せぬ知らせ
まさこさんの店を最初に訪れたのは、2019年春。
福岡にある昭和レトロなパーマ屋さんの店構え。でも中に入るとビンテージ感のあるオシャレな空間と、心地よい音楽、そしておいしそうなにおい。こんな素敵な喫茶店があったとは。
連れてきてくれた知人に勧められるままに、ナポリタンを注文。口いっぱいに広がるトマトソースとチーズのうま味。ナポリタンのイメージが覆った。
料理していたのは、とびきりかわいらしい女性。それがまさこさんとの出会いだった。エプロンがよく似合っていて、その風景丸ごと映画のワンシーンのよう。カウンター越しに話しかけると、もう小学生のお子さんがいると聞いて驚いた。可憐な少女のように見えて、お母さんなのか。

しばらく福岡に行く機会がなかったが、2023年夏、料理家の桧山タミ先生の台所展が催されるというので楽しみに出かけた。古い新聞エッセイを読んだりしながら、私の知っているタミ先生は、その長い人生のほんの一部なんだとしみじみ感じながら会場を回った。
帰りのバスの時間が迫ってきて、出ようとしたとき、見覚えのある顔が目に入った。……まさこさん? 車椅子に乗っている。後ろから押すのは旦那さん。まさこさんの口元に耳を近づけて、何か聞き取っている様子。
人違いじゃない、やっぱりまさこさんだ。車椅子が本格的なものに見えた。声をかけようかと迷ったが、バスの時刻が気になり、そのままエレベーターに乗り込んだ。

2024年の夏、知人の文さん(「キッチンパラダイス」店主の田中 文さん)からまさこさんのことを聞いた。ALSに罹患したという。まさか__。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋肉を動かしたり運動を支配する神経が障害を受け、体が動かせず筋肉がやせていく難病。
一年前、閉まるエレベーターの隙間から見た車椅子の風景が蘇る。急に、今日まで何も知らないでいたことが悔やまれた。いや、知ったからといって何になるわけでもないが。私と同じひとりの女性であり、私と同じお母さんでもあるまさこさん。どんな気持ちで過ごしてきたのか。いま、どんな気持ちでいるだろうか。
〈写真・文/繁延あづさ〉
繁延あづさ(しげのぶ・あづさ)
写真家。雑誌や広告などの撮影で活動中。ライフワークに出産撮影がある。2011年、長崎に移住。著書に『うまれるものがたり』(マイナビ)『山と獣と肉と皮』(亜紀書房)、『ニワトリと卵と、息子の思春期』(婦人之友社)、『鶏まみれ』(亜紀書房)など。雑誌『助産雑誌』(医学書院)表紙&巻頭を担当中。
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4才と12才の子の母であり、シェフのまさこさん。3年前、難病ALSだと診断を受けました。治療法が確立されていない進行性の病気です。
「子どもたちに”母の味”を残したい」
病と向き合う著者がそんな願いを胸に綴った、料理が好きな人や、家族を大切に思うすべての人に届けたい胸に深く響くエッセイ&レシピ集です。
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まさこさんのレシピやお店のこと、ALSとともに生きる日々については、こちらの記事でもご紹介しています。ぜひあわせてお読みください。
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▼天然生活web連載「難病ALSとともに生きる」
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