みんなでレシピ本を実現していく
2025年の春、雑誌の記事にするからと撮影で声をかけてもらったが、出産撮影と重なってしまい断ってしまった。夏、文さんから「レシピ本にするよ」と連絡をもらった。なぜか“今度こそ”と思った。
文さんから最近のまさこさんの様子を動画で見せてもらう。旦那さんに抱き上げられるまさこさんは、まるで人形のようだった。とくに足はもう動かない様子。一方で、話したり、何より笑顔は出会ったころと変わらない。
まさこさんのレシピ本づくり。どうやって実現していけるか、仲間みんなで考えながら進めているという報告を聞きながら、私も現場をイメージしていく。撮影場所は、最初に出会ったあの喫茶店「SOUNDS FOOD SOUNDS GOOD」がいいと思った。
2025年秋、撮影日前日。まさこさんのママ友たちが集って料理の準備をしている様子がLINEで送られてくる。まさこさんを中心に据え、みんなが努力を積み重ねてきている。明日からの撮影のために。緊張で歯が震えてきた。

撮影日早朝、福岡に向けて車を走らせる。現場に皆が集まり始めた。撮影しやすい場をつくるため、部屋のものを外に出したり、機材を運び入れたり、やることがいっぱいで私の緊張はすっかり解けていた。
まさこさんが現場入り。ずっとオンラインで打ち合わせはしていたけど、ようやく会えた。顔が見られた。よく知った笑顔が、いまここに、確かに。
たくさんのママ友が、まさこさんの手となり足となり、料理をつくり上げる。出来上がった料理を持ってきて、ママ友たちが「どう?」と彼女の目を見つめると、スタイリングを担うまさこさんは、あっさり首を振った。
ALSの進行で話しづらいまさこさんの声に、皆で耳をすませ、ママ友たちは何度もやり直した。「どのお皿に盛る?」「焼き目つける?」「クリームの垂れ具合はこれでいい?」と問い合わせながら。ようやくOKが出ると、今度はまさこさんと私で写真を仕上げていく。「どこを見せたい? 」「この料理はどの角度から撮る?」「テカリはこれでいい?」「もっと底上げしようか?」と。
現場では、誰もがまさこさんの前でひざまづく。まさこさんの目を見て、声を聴くために。そうしないと彼女の意向が受け取れないからだが、まるで王女さまのもとにやってくる人々みたいで、ちょっとおもしろかった。
まさこさんは最後まで毅然とした態度を貫いた。妥協は微塵もなかったと思う。現場はずっとまさこさん中心だった。

〈写真・文/繁延あづさ〉
繁延あづさ(しげのぶ・あづさ)
写真家。雑誌や広告などの撮影で活動中。ライフワークに出産撮影がある。2011年、長崎に移住。著書に『うまれるものがたり』(マイナビ)『山と獣と肉と皮』(亜紀書房)、『ニワトリと卵と、息子の思春期』(婦人之友社)、『鶏まみれ』(亜紀書房)など。雑誌『助産雑誌』(医学書院)表紙&巻頭を担当中。
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4才と12才の子の母であり、シェフのまさこさん。3年前、難病ALSだと診断を受けました。治療法が確立されていない進行性の病気です。
「子どもたちに”母の味”を残したい」
病と向き合う著者がそんな願いを胸に綴った、料理が好きな人や、家族を大切に思うすべての人に届けたい胸に深く響くエッセイ&レシピ集です。
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まさこさんのレシピやお店のこと、ALSとともに生きる日々については、こちらの記事でもご紹介しています。ぜひあわせてお読みください。
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▼天然生活web連載「難病ALSとともに生きる」
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