考察
納豆の成分がオクラの生育を促したか
オクラの粘りは、納豆液で確かに増強できました。「同物同治」の思想に基づけば、納豆の粘りがオクラに取り込まれたことになりますが、実際にはもう少し複雑な理由がありそうです。

納豆菌の力はにおいや粘りの強さに比例する。豆乳と混ぜてミキサーで粉砕しても粘りは生きている
オクラのネバネバ成分は、ペクチンやガラクタン、アラバンといった水溶性の食物繊維と多糖類の混合物です。これらは光合成によって植物体内でつくられる炭水化物の一種であり、なんらかの効果でその量が増したと推測できます。
納豆液に含まれる物質で炭水化物の増量に寄与するのはアミノ酸です。
アミノ酸は炭水化物を含み、光合成でつくられる炭水化物に上乗せされてさやに蓄積されます。
また、通常、窒素を硝酸として吸収した場合、それを野菜の体をつくるタンパク質の原料であるアミノ酸に合成するためには、光合成でつくられた炭水化物が使われますが、それも節約できます。
その結果、さやの炭水化物が増加して、粘りを増したのではないでしょうか。
アミノ酸のかたちで栄養を吸収すると、植物が効率的に利用できる

ボカシ肥もアミノ酸を含みますが、納豆液は水に溶かした状態で施用するため、よりスムーズに吸収できるのです。
納豆液本来の微生物資材としての働きも忘れてはいけません。納豆菌が土中の有機物を分解し、それが他の微生物の餌となり、ボカシ肥を施用した普通栽培以上に土壌が豊かになったのでしょう。
今回は納豆液をオクラに施用しましたが、茎葉を食用とするモロヘイヤやツルムラサキも同様に、ネバネバ増強を期待できそうです。
本記事は、『家庭菜園の超裏ワザ』(家の光協会)からの抜粋です。
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<撮影/阪口克>
和田義弥(わだ・よしひろ)
1973年茨城県生まれ。フリーライター。20〜30代前半にオートバイで世界一周。40代を前にそれまで暮らしていた都心郊外の住宅街から、茨城県筑波山麓の農村に移住。昭和初期建築の古民家をDIYでセルフリノベーションした後、丸太や古材を使って新たな住まいをセルフビルド。約5反の田畑で自給用の米や野菜を栽培し、ヤギやニワトリを飼い、冬の暖房を100%薪ストーブでまかなう自給自足的アウトドアライフを実践する。著書は『増補改訂版 ニワトリと暮らす』(グラフィック社)、『一坪ミニ菜園入門』(山と渓谷社)など多数。