(『別冊天然生活 薬膳でめぐりのよい健やかな暮らし』より)
心身をめぐらせる、韓方(はんばん)の力
“ものは出さずに整える”を徹底するコウさんの家で、出したまま置かれているのが、果実酒と果実茶。薬食同源に則った東洋医学のひとつで、韓国独自に発展した韓方による製法です。
「私たちにとって、これらはお薬箱のような存在。体をめぐりよく、健やかに保つためには日々欠かせません。果実や薬草の形、色合い、少しずつ濃くなっていくお茶やお酒の様子を眺めるのも、心安らぐひとときです」
そう話すコウさんが手にしているのは、よもぎ。韓方では、浄化作用があるとされている植物です。
「よもぎはお茶にしてもいいですし、 塩と合わせればバスソルトとしても使えます。わが家では、お茶にするものはそのまま湯船にも入れているんですよ。口の中に入れるものも肌に触れるものも、同じように安心できるものがいいな、と考えていて」
よもぎをやさしくほぐしながら炒っていくと、ふわりと香りが広がります。浄化された香りに誘われ、自然と呼吸が深まります。まさにそれは、清浄な空気が体をめぐる感覚。
「風通しよく空間を整えることは、体も心も滞りなくめぐる環境を、自然につくり出すように感じます。すべてはゆるやかに、それでいてたしかにつながっているのです」
韓方(はんばん)とは
中医学をベースに、韓国の自然や風土、人々の暮らしや体質に合わせて発展した韓国の伝統医学
気をめぐらせ、滞らせない工夫。コウ静子さんの薬膳アイデア
コウ静子さんの薬膳生活01
お手製バスソルトでデトックス

部屋中に清々しい香りが。「自然と、大きく息を吸い込みたくなるでしょう?」
「わが家では、湯船の色が毎日替わるんです」とコウさん。好みのお茶を選ぶように、手元にある薬草類をミックスして、その日の体調にふさわしいバスソルトをつくります。
「麻袋にまとめて、ポンと入れるだけ。体の経絡を押しながら、ゆっくりと入浴します。それだけで驚くほど汗が出て、すっきりとデトックスできるんですよ」
よもぎ湯でポカポカに

今夜はよもぎ、カモミール、たんぽぽの根とネトルをミックス。体を温め、安眠を誘う効果を求めて。
コウ静子さんの薬膳生活02
韓方の知恵で、体を穏やかに整える
2つのキャビネットは、通称“韓方棚”。中には韓方素材が、上には季節ごとにつけ込む果実酒や果実茶の瓶がずらり。さらに季節ごとの花茶や、花を活けるように置かれた韓方素材も並びます。

「植物の色やかわいらしい形は、見ているだけで心いやされるもの。どれも体への影響が穏やかで、安心して口にできるものばかりです」

体の声に耳を澄ませ、季節に合った養生を。この棚は、コウさんの生活には欠かせない存在。植物、果実の色合いは、華やかながら落ち着いた表情で、この部屋の雰囲気にしっくりとなじむ
自然の姿を愛でながら

花を活けるようにあしらっているのは、桂皮や甘草、なつめ。伸びやかで空間に動きをもたらす。
日々の食から健康になる「薬膳」のある暮らしと、シンプルレシピ集
「薬膳」「漢方」を健康のために積極的に取り入れる人が増えています。薬膳は、季節や体調に合わせて食材を選び、バランスの取れた食生活によって健康を保つ知恵です。旬の野菜は無理なく取れて値段もお値ごろ、そしてその季節に多い不調を改善する力があります。ぜひ日々の食生活や生活習慣に「薬膳」を取り入れて、健やかな体づくりを。ウー・ウェンさん、コウ静子さん、小鮒ちふみさんの薬膳料理のシンプルレシピも収録しています。
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コウ静子(こう・しずこ)
料理家、国際中医薬膳師、茶人。薬膳や韓医学を取り入れ、体を穏やかに整えるレシピを多数発表している。著書に『季節に寄り添う韓国茶』(グラフィック社)、『症状別 不調のときに食べたいごはん』(家の光協会)など。
インスタグラム:@kohshizuko