• 介護をしながら仕事や自分らしさを手放さず、28年を歩んできた吉祥寺の人気カフェ店主・横尾光子さん、77歳。彼女の語る言葉が、介護中の人たちの心を軽くすると静かな反響を呼んでいます。今回は、横尾さんを囲むお話会に寄せられた4つの悩みと、横尾さんの回答をお届けします。

    介護のなかでも、人生の主役は『私』のままでいい

    お話会が終わると、横尾さんは「ああ、楽しかった!」と満面の笑顔。

    28年間の介護があった人とは信じられないほど、清々しくて軽やかです。

    画像: 司会は、北野伊公子さん(kitano village主宰)。横尾さんとは17年来の大親友です 撮影/福井さゆり

    司会は、北野伊公子さん(kitano village主宰)。横尾さんとは17年来の大親友です

    撮影/福井さゆり

    「介護は、自分をやさしい人間にしてくれた大切な体験でした」

    さらりと言ってのける横尾さんの話を聞くたびに、なんだか「大丈夫かも」と思えてくるから不思議です。

    この日、横尾さんが何度も口にしていたのは、「好きなことを大切に」という言葉でした。

    好きな仕事を続けること。お気に入りの服を着ること。友人と笑い合うこと。

    介護が始まると、私たちはつい目の前のバタバタに飲み込まれて、自分の時間や「好き」という感情をいつのまにか遠ざけてしまったり、見て見ぬふりをしてしまったりしがちです。

    けれど、横尾さんは教えてくれます。自分自身の心を喜ばせる小さなひとときこそが、めぐりめぐって相手への思いやりになり、明日へ歩き出す力になるのだと。介護をする人の人生だって、一度きりの大切な時間なんですから。

    「介護の只中にいても、自分の人生を楽しまなきゃね」

    * * *

    帰り道、その言葉を反芻しながら、ふと気になっていたパン屋へ。両親のためではない、自分のためだけに選んだのは、力強く焼き上げられたハード系のバゲッドサンド。

    そんな私を喜ばせる小さな作戦で、帰り道の足取りは、確かに少しだけ軽くなりました。

    ※本記事は、2026年7月にkitano village(大阪)で開催された横尾光子さんのお話会「その先にある扉」の内容をもとに、コラムとして再編集したものです。

    『This Day Magazine(街と、介護と、コーヒーと。)』のYouTubeでは、横尾さんがご自身の介護の日々と、その先にある新しい夢について語っています。朗らかな笑い声やカフェの空気感など、横尾さんらしさが伝わるインタビューです。

    ▶動画のフルストーリーは こちらから


    〈お話会の写真・文/綾田純子 協力:kitano village(インスタグラム@kitanovillage2015)〉

    横尾光子(よこお・みつこ)
    1948年生まれ。家族の介護と並行しながら、50代未経験で東京・吉祥寺に「お茶とお菓子 横尾」を開業。多くのメディアで紹介される人気店に。現在は島根と東京を行き来しながら、両拠点でカフェを展開。主宰する大人服ブランド「クロロ」では「がんばりすぎないけれど品がある」スタイルを提案する。
    インスタグラム:@yokoomitsuko @ocha_okashi_yokoo_chloro

    訪れた人:
    綾田純子(あやた・すみこ)
    1969年生まれ。編集者・ライター。東京でフリーランスとして、インテリア、旅、ライフスタイルを中心に雑誌や書籍の編集・制作に携わった後、故郷・岡山へ。高齢の両親の介護をしながら活動を続ける中で、介護する人の暮らしにも、好きなものや美しいもの、ユーモアを。そんな思いから、Webマガジン「This Day Magazine(街と、介護と、コーヒーと。)」を立ち上げる。
    note:@thisday_magazine



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