(『天然生活』2021年2月号掲載)
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。日常のなかで、自然環境に負荷をかけない暮らし方を心がけている。
料理研究家 横山タカ子さん
想像をめぐらせ、「土に還るもの」を選び使う
私自身が、ごみを出さないために実践していることのなかには、庭があり、少しばかりの土や木々があるからこそできることが、少なからずあります。
ただ、日々の買いもののなかで、できるだけ「土に還る素材」のものを選択することなら、マンション住まいの方にもできますよね。
私は海のない長野県在住ですが、山がよい水をつくり、海をつくるのだと思っているので、プラスチック製品やラップがごみにまぎれ込んで海にたどり着くことを想像し、各家庭がものの選び方を考えていくのは、とても大事なことだと思っています。
うちでは、器も、道具も、保存容器も、プラスチック製品を使わずに生活できています。土に還りにくいペーパータオルもほとんど使いません。さらしの布なら何度も繰り返し使えますから。
今年は、コロナの影響で自宅にいる間、布にみつろうを染み込ませて、みつろうラップづくりをしました。とてもよいですよ。
ただ、みつろうラップまでいかなくても、身近なものでラップの代用はできます。ちょっとしたほこりよけなら、かごをかぶせたり。お気に入りの布のはぎれを器にかぶせて輪ゴムで留めて保存すれば、におい移りもほとんどありません。
また、庭にある柿の葉、朴葉、柏の葉、梅の葉などを取ってきて、グラスなどにかぶせてひもでしばっておくだけでも、ほこりよけには十分です。
葉は、お料理に添えれば季節の彩りにもなって、とても素敵です。わが家は、そのように庭と台所、食卓が一体なのです。
台所で出る野菜くずは、ぼかし(有機質肥料の一種)をかけながら庭の土に埋めています。ミミズがたくさん来て、すぐに分解され、土に還っていきますよ。
そうしてできた土を、春になったら庭の木の根元にまくのです。落ち葉も、1年間木の箱にためておくだけでとてもよい腐葉土になるので、これも庭木に使っています。
このように草木を育てているわが家の庭には、実は消毒の必要がありません。
だからこそ、葉も枝も安心して食卓で使うことができるんです。有害なところを好まないといわれているヒキガエルが3匹、毎年、庭のメダカの鉢に帰ってきてくれるんですよ。
彼らはわかってくれているんだな、とうれしくなります。
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〈構成・文/保田さえ子 イラスト/山元かえ〉
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです