天然素材の道具は、手入れをしながら使い込むほどに変化が楽しめる、台所仕事のよき相棒。「大切なのは素材を知ること」と話す「ひとり問屋」で道具のプロの日野明子さんに、素材ごとのお手入れのコツを教わります。今回は、「漆」のお手入れを。
(『天然生活』2022年2月号掲載)
日野さんの愛用道具
「漆」の器
日々つやが増す、「猪狩史幸(いがりまさゆき)さん」の正法寺椀
作家がみずから漆を採取してつくる漆器。使うほどに艶やかになるので、新品ではなくこちらを譲ってほしいといわれることも。「煮物などおかずを入れるのにも重宝しています」
ごはん用の「安比塗(あっぴぬり)漆器工房」の飯椀
日野さんは、汁ものにごはんにおかずにと日常的に漆器を使う。「飯椀も手に持って食べるものだから、軽くて熱を伝えにくい漆の器がいい。和食に合っているのだと思います」
「漆」のお手入れ方法
【漆の道具について】
よく、「一番のお手入れは使うこと」といわれる漆。その美しさを損なわず、より艶やかに育てるためには、しまい込まずに日々の食卓で使うのが一番です。きちんとふき上げることで、深い艶が出てきます。
これはNG
電子レンジ、食洗機、金属たわし、天日干し、冷蔵庫
意外なことに取り扱いが難しくない漆の器。日野さんは日常的に使っているそう。
「軽くて手入れも楽、使うほどに質感がよくなっていきます。注意点といえば、100℃以上の熱湯を避けることくらい。熱湯がかかると漆が白濁してしまいます」
POINT 1:使ったあと
ガラスと同じお手入れ
ぬるま湯で洗い、ふきんでふいて水けを取りつつ磨き、しっかり乾かす、と手入れはいたってシンプル。落とせばひびが入ってしまうことと、磨く楽しみがあることなどはガラスと共通。
POINT 2:しまうとき
直射日光を避ける
漆は紫外線に弱く、日に当てると艶がなくなって質感が変わってしまうので注意。しまうときには、漆同士なら重ねても問題ないが、焼き物などほかの器とは重ねないほうがいい。
<監修/日野明子 撮影/山川修一 取材・文/黒澤 彩 イラスト/はまだなぎさ>
日野明子(ひの・あきこ)
スタジオ木瓜代表。つくり手と使い手をつなぐ「ひとり問屋」業のほか、手仕事の道具や器のイベント企画にも携わる。『うつわの手帖』シリーズなど、著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです