想い出のかけらと料理

子どものころから食への好奇心が旺盛だった私は、味や香りを感じると瞬時に記憶がよみがえることがよくあります。
その感覚は、私のつくる料理に深い影響を与えていると思います。
いりこのだしの香りからは、朝の台所に立つ母の姿。
油のはねる音は、祖母が揚げてくれたポテトを兄弟で奪い合った記憶。
チョコレートトリュフは、初めて好きな人のためにつくったお菓子の甘酸っぱい思い出。
ジェノベーゼの香りは、お気に入りのカフェでいつも注文した絶品パスタ。
前回紹介した「グリルドコーンポタージュ」のレシピもそう。
ニューヨークで、歩き始めたばかりの息子を連れて訪れたキューバ×メキシカン料理屋でいただいたメニューを再現したものでした。
こうして記憶の中の音・香り・味が幾重にも重なり、私の料理はできているのです。
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▼「グリルドコーンポタージュ」のレシピはこちら
〈撮影/いわいあや 協力/田中 文(キッチンパラダイス)〉
まさこ
1981年、喫茶モーニングの街・愛知県豊橋市に生まれる。カフェオーナーだった賢介さんと結婚し、家族で日本と海外を行き来する生活を送った後、2018年に福岡でカフェ「サウンズフード サウンズグッド」をオープン。2021年、長女・琳さんを出産後、足から違和感を感じるようになり、2023年にALSの診断を受ける。失意の底に突き落とされるが、自然治癒の症例もあると知り、その可能性に希望を見いだして生きることを決意。現在は「#何処かで誰かの希望となりますように」を合言葉に、これまで考案してきたレシピを記録に残す活動を開始している。
インスタグラム:@sfsg_masako
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▼『天然生活』2025年6月号掲載のまさこさんの記事を公開中です。ぜひ合わせてお読みいただけましたら幸いです。